414.大地に咲く花.13 | マリンタワー フィリピーナと僕といつも母さん byレイスリー
入口に入って来た後藤と目と目が合った、その瞬間アリサの心臓が大きく高鳴り始めた。



人は恋をする、初めて合った人にいきなり恋する事もあれば、何かの関係(学校や仕事や店)の側にいる人にいつの間にか恋している事もある、前者は見た目が自分のタイプなのだろうが後者は見た目よりも性格や仕草が好きだったりする、またその複合の場合もある、見た目も性格も仕草も好きとなると完全に「惚れてまうやろ」の世界なのだろうが、何れにしても問題は自分が好きになっても相手のある事が最大のネックだろう。


どんなに恋い焦がれても相手が自分を好きになってくれなければ致し方ない、相手にもタイプがあるし、どうしても受け入れてもらえない場合もあるだろう、後藤は一体アリサをどう思っていたかは解らない、しかし、アリサはファーストインスピレーションがあった、仕事の初日に出会った日本人に恋心を抱いていた、初恋、こんな仕事をしている彼女たちも人間だ、好き好んで売春などするはずはない。


現代の日本の普通の家庭に生まれれば食べる事に困る事はない、具合が悪ければ病院にも行ける、学校にも行けて自然の状態で恋をする事もあるだろう、それが日本人に取っては普通の事だろうが貧しい国の人から見れば夢のような生活なのだ、食べる事が出来ない、学校に行けない、病院に行く事も出来ない、これは全てお金がないからだがお金が無くても恋はする事は出来る、売春婦といえども同じ人間同士、人を愛し愛される権利は当然あるだろう。


日本人の一部の方には貧しい国というだけで見下す傾向がある、よほど日本人が優秀な人種と思っているようだ、ワタクシの人生の半分は貧しい人たちと接する機会が多かった、初めての外国人の恋人はタイからやって来た売春婦の恋人だった、国が違う、人種が違う、お金があるなしで人を決めつけるのは以下にもケツの穴の小さい事ではないか、そんな見方しか出来ない生き方をする人こそ人間の資格というものが欠如しているに他ならないとワタクシは思う。

アリサは後藤の席に付いた、
アリサ「後藤さん、ごめんなさい、わたし..」


後藤「いや、いいんだよ、ただ、あんな事があった後だから心配してたんだよ」


アリサ「ホントに!アリサの事を心配してくれたの?」


後藤「そりゃ当たり前だろう、もう知り合って3年以上になるんだからな」

アリサ「後藤さんに会って、もう3年以上になるんだよね」
アリサは後藤が自分の事をどう思っているのかを聞きたくて仕方なかった、しかし、人を好きになった経験のないアリサにはどう切り出していいか判らない、ましてや女性から聞くのは恥ずかしい事だったろう、すると後藤が
後藤「俺、実は明日日本に帰る事になったんだよ、デートの約束破ってごめんな」


アリサ「あ、明日帰るの!?」


後藤「うん、明日だ、アリサともお別れだな、本当にいい生徒だったよ」
アリサは何も言えなくなった、「ワタシは単なる生徒だったのか」恋する女性(男性)は惚れた男(女)のちょっとした言葉尻を敏感に捉えて時には悪く解釈してしまう、その時のアリサが残念ながらそうだった、マイナス思考に陥った彼女は何も意思表示が出来なくなってしまった。


そして後藤との別れがやって来た、
後藤「じゃあ、アリサ元気でな、いつかどこかで、また会えるといいけどな」


アリサ「後藤さん、色々今までありがとう」
この時のアリサには精一杯の別れの言葉だった、後藤は何か言おうしたが、そのまま手を振って去って行った、隣にいたピー.ユッが何か言いたそうな顔をしていたがアリサの背中を軽くポンと叩いた後に「タムガーン、タムガーン(仕事、仕事)」と女の娘たちに向かって叫んだ。


アリサは泣かなかった、強くなると誓った彼女はこれしきの事で泣くわけにはいかなかった、後藤が去って半分ほどの月日が流れた、ベッドに横になっているとピー.ユッからの呼び出しがかかった、アリサには何の用か察しはついていた、ピー.ユッは煙草を吸いながらソファーに足を組む得意な格好で待っていた、
ピー.ユッ「あんたは頭がいいからワタシが何で呼んだか判るよねえ」


アリサ「もう歳だから、ここを出て行けっていうんでしょう」


ピー.ユッ「さすがに察しがいいねぇ、アンタはどう思うか判らないけど、こんな話があるんだけどね」
ピー.ユッが話始めた話とは........。



次回に続きます、いつもご訪問頂きまして誠にありがとうございます。