400.サイレント.ナイト.11 | マリンタワー フィリピーナと僕といつも母さん byレイスリー
大山さん「エンジェル、エンジェルじゃないか!いや違う、エンジェルにしては若すぎる」


女性「エンジェルワ ワタシノ ママノ ナマエヨ」

大山さん「ミ、ミリイなのか!!」


ミリイ「ドウシテ ワタシノ ナマエヲ シッテルデスカ?」


大山さん「そ、それは」

ミリイ「ダディ、アナタワ ダディジャナイデスカ、ソウデスヨネ ダディデショ?」
20年振りに娘に会ったのに言葉が出ない大山、会ったらあれも話したい、これも話したいと思っていたのにイザ会ったら出てこないのだ、声を振り絞り
大山さん「そ、そうだよ、ダディだよ、ミリイー!」


ミリイ「ダディ!!アイタカッタヨ、アイタカッタヨー、ダディ!!」
抱き合ってお粒の涙を流す二人、そこにパイプオルガンがなり響きステンドグラスから眩しいくらい強烈な光が二人に注がれる、その光に目をやる二人の前に一人の女性がいつの間にか立っていた、
大山「んっ、なんだ天使か、いや、お前は、お前はエンジェル、エンジェルだよな!!!」


エンジェル「アナタ 、ワタシ アナタニ ワルイコト シタヨ、ホントニ ゴメンナサイ」


大山さん「お、お前まで来てたのか、もういいよ、もういいんだよエンジェル、20年も前の事なんか俺、全部忘れたから」

エンジェル「ゴメンナサイ、ホントニ ゴメンナサイネ」
泣きながら謝るエンジェルに近寄ろうとするとスーッと、その姿は遠ざかる、
大山「エンジェルー!!」
そして再び、大山の意識は遠ざかる。



大山さんはクリスマスイブの日、脳溢血で倒れ近くの墨東病院運び込まれていた。



病院に運び込まれ1ヶ月後に大山さんは目覚めた、そしてその側には夢でなく本物のエンジェルとミリイが立っていたのだった、
エンジェル「アナター、ダイジョウブ!!」
目覚めたばかりで直ぐには口が効けない大山、
ミリイ「ダディ、ミリイダヨ、アイタカッタヨ、ダディ」


身内と縁を切っている大山さんが倒れてエンジェルとミリイを呼ぼうと杉田会長が動いたのだった、フィリピンにいる友人に連絡し日本大使館に協力を依頼したらしい、住所は大体判っていたので直ぐ探し出す事ができ、どうにか二人は日本にやって来る事が出来たのだった。


まだ上手く話せない大山さんはエンジェルとミリイの手を握りしめた、その目からは涙が溢れかえっていた、その涙を拭うエンジェル、大山の頬に手をやり
エンジェル「アナタ ユルシテクレル、モシ ユルシテクレルナラ カミヲ ナデテ ムカシノヨウニ」
大山に許す許さないの気持ちなどなかった、ユックリと手をエンジェルの頭に持っていき優しく髪を撫でた。



それから1ヶ月後に大山さんは退院した、その時左右にはしっかりとエンジェルとミリイが大山さんを支えていた、いかにも満足そうな顔をした大山さんは20年間分の幸せを噛み締めながらユックリユックリと一歩づつ大地を3人で歩いた、この日の為にコツコツと働き送金し続けた、何の遊びも趣味も持たず、ただこの日の為に生きてきた、人によってはつまらない人生と言うかもしれない、しかし、大山さんの愛は騙す騙されたの行為や感情さえ超越していたに違いない。


エンジェルのフィリピン人の旦那は10年前に死んでいた、旦那が死んだからといって酷い仕打ちをした大山さんに自分から元に戻りたいなどとは流石に連絡出来なかった、大山さんが毎月送ってくれるお金が実に有り難かった、そして後悔に涙した、子供を少しでもいい学校にやりたかったエンジェルはカナダにいる叔父夫婦を頼りメイドをしながら7年間仕送りをしフィリピンに戻った、子供たちが働くようになり生活も楽になった、そんな時に杉田会長の友人から大山さんが倒れた事を聞かされた、日本に行く手続きも全て杉田会長の友人が手配してくれた、エンジェルは大山さんに会えるそして許しを乞えるチャンスが出来た事を神に感謝して日本にミリイを連れてやって来た、病室に寝て意識のない大山さんを見てエンジェルもミリイも号泣した。



去年の2月、大山さんがマネージャーをやっていたスナックの台湾人のママに錦糸町の駅でバッタリ出会った、ママは数年前に引退したのだが、そのママから半年前になくなった事を聞いた、大山さんは退院後、エンジェル、ミリイと日本で一緒に暮らし二人が弁当屋やホテルのベッドメイクの仕事を必死にこなし大山さんの面倒を看たそうだ、フィリピンの家にも何度か行ったらしい、幸せな日々を送っていたが、退院から5年後に再び倒れそのまま亡くなったそうだ。


エンジェルとミリイがフィリピンに帰る為に部屋を整理していると二人の名前の500万円づつ入った貯金通帳があったという、これを見て二人は改めて泣きじゃくった、最後まで大山さんは大山さんだったという事だろう、この事を聞いたワタクシは、大山さんの事を思い胸に刻み8年振りにフィリピンに行き久しぶりに会ったジョイにプロポーズをする事になるのだった。



サイレント.ナイト.完



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