つづき
僕は何とも言えない気分の悪さに苛まされていた。
おそらく、前を走るNもそうだったんだろう。
説明を忘れていたが僕は霊感はないが霊の存在を信じている。水木しげるが描く妖怪を愛してさえいる。
だけど、典型的幽霊は怖い。
Nは霊感があると聞いていたが僕と一緒に居る時には見えたとかいった事は聞いた事は無い。
だがこの奥ラインで一度、子供を抱いた女性が立っているのを見たと言っていた。
僕らは黙々と奥ラインを進んでいた。
そして、ある場所に近づく。廃墟だ。
道路から少し離れた場所(山側に)に民家がいくつかある。
昼夜問わず何度もこの場所を通ったことがあり、遠巻きに見ていたが外観の荒れ具合から典型的廃墟で、まず人が住んでいる気配がない。
上がり勾配のコーナーを膝を擦りながら駆け上る。
コーナーを脱出すると廃墟のあるロングストレートに出る。
あり得ない光景を目にする。
一つの廃墟のある部屋に明かりが灯っている。
誰かが忍び込んで懐中電灯を照らしてるような明かりじゃない。
その明かりはどこの家庭にもあるような、暖かみのある色だった。
次の瞬間、部屋の中から影のようなものがすっと窓に近づいてきた。
僕はひどく興奮していて見間違いだったかもしれなかったが「人」ではない。
窓の向こうにいたのは確かに「影」だった、今でも自信を持っていえる。
バイクで走る速度は遅くなってきた。
「これ以上見てたらヤバい!」直感を信じて僕は咄嗟に目線を外してNの方に目をやった。
Nは廃墟の方をまだずっと見ていた。
僕はこの場を一刻でも早く去りたい一心で「飛ばせ!」とクラクションを何回も鳴らした。
廃墟の方を見ていたNはチラッとこっちを見て思い出したようにスピードを上げだした。
興奮のせいもあり僕らはハイスピードで奥ラインを進んで行く。
ところが奥ラインを抜けても一向に速度が落ちない。
それどころかNは止まるどころか一層深い闇が広がる道に進路を変えて走っていった。
その道は更に細く、ガードレールの向こうは崖があり、ただ舗装されているだけの本当の山道だった。
僕はその道を通ったことがなく、Nはこの辺りの地理には僕よりは詳しいので
裏道なのかな?程度に思いとりあえず先導を任せて後ろを走っていた。
その道は上がり勾配がキツく、一車線しか無いためカーブを抜けた先に対向車が来ることを考えて走らなければいけないが、Nは依然スピードを落とさず進んで行く。
正直、僕もそのペースにひっついていくのがキツくて何回か飛び出しそうになった。
ふと思いつく。僕らは今、山を頂上に向かって走っているようだった。
何故そんな場所に行かなきゃならない?休む場所(コンビニ)やNの家へは奥ラインを抜けた別の方向だぞ?
僕は次第にその思いが強くなり、やがては恐怖へと変わっていった。
「こいつはどこに俺を連れて行く気だ?」
止まれ!って意味合いでクラクションを何回も鳴らしたが無反応。
知らない道で、夜で、この速度を考えると前を走るNの横に並ぶには相当の覚悟がいる。
しかし得体の知れない恐怖の方が勝り、僕はNを止めることにした。
何回かトライしてやっとのことで横に並び「取りあえず止まれ!!」って大声で叫んだ。
Nは大人しく段々と速度を落とし、道路の脇にバイクを停めた。
Nはゆっくりとバイクを降り、ボーっと突っ立っていた。
僕は半ばキレ気味だったがある程度抑えた声で「どこ行くん?」とNに訪ねた。
N「・・・」反応なし。
僕「なんかしらんけどもどろーや」
N「・・・」反応なし。
僕(キレて)「なんとか言えや!」
N「・・・」反応なし
僕はその時、ヘルメット越しのNの顔を間近で見た。
無表情だった。
Nはただ僕の顔を見て何も喋ろうとしないし、感情の変化もなかった。
僕はこの時ほど無表情が怖いと感じたことはなかった。
僕は本当に怖じ気づき、飛び乗るようにバイクに乗り来た道を引き返す。
道は降りるだけの一本道なんで迷う心配はなかったがNが追いかけてこないことをひたすら願い、バックミラーを何度も確認し、できる限りの速度で下山した。
この話は以上です。
Nに関してはそれっきり連絡もしてないし、連絡もこない。ただよくあるような死んだ、とかいう話がないのはなによりだった。だけど僕はもう、Nに会うのが怖くなっていた。
一体、あの日の夜は何が普通で何がおかしかったのかがよく分かりません。
もしかしたら僕がおかしかっただけだったのかもしれません。
ただ言える事は異次元、異空間というものが存在したんじゃないか、と僕は思う。
もう一つ不思議な事は、この話はその日からしばらく頭に残ってたんだけど(嫌でも残るよね)半年経ったくらいから(正確ではないけど)僕の記憶からポロッと消えていた。
それがつい最近僕の記憶の中に戻ってきたのでこの話を書いてます。
文章が長い上、分かりづらかったかもしれません。
長々と付き合って頂けた方、ありがとうございます。
僕は何とも言えない気分の悪さに苛まされていた。
おそらく、前を走るNもそうだったんだろう。
説明を忘れていたが僕は霊感はないが霊の存在を信じている。水木しげるが描く妖怪を愛してさえいる。
だけど、典型的幽霊は怖い。
Nは霊感があると聞いていたが僕と一緒に居る時には見えたとかいった事は聞いた事は無い。
だがこの奥ラインで一度、子供を抱いた女性が立っているのを見たと言っていた。
僕らは黙々と奥ラインを進んでいた。
そして、ある場所に近づく。廃墟だ。
道路から少し離れた場所(山側に)に民家がいくつかある。
昼夜問わず何度もこの場所を通ったことがあり、遠巻きに見ていたが外観の荒れ具合から典型的廃墟で、まず人が住んでいる気配がない。
上がり勾配のコーナーを膝を擦りながら駆け上る。
コーナーを脱出すると廃墟のあるロングストレートに出る。
あり得ない光景を目にする。
一つの廃墟のある部屋に明かりが灯っている。
誰かが忍び込んで懐中電灯を照らしてるような明かりじゃない。
その明かりはどこの家庭にもあるような、暖かみのある色だった。
次の瞬間、部屋の中から影のようなものがすっと窓に近づいてきた。
僕はひどく興奮していて見間違いだったかもしれなかったが「人」ではない。
窓の向こうにいたのは確かに「影」だった、今でも自信を持っていえる。
バイクで走る速度は遅くなってきた。
「これ以上見てたらヤバい!」直感を信じて僕は咄嗟に目線を外してNの方に目をやった。
Nは廃墟の方をまだずっと見ていた。
僕はこの場を一刻でも早く去りたい一心で「飛ばせ!」とクラクションを何回も鳴らした。
廃墟の方を見ていたNはチラッとこっちを見て思い出したようにスピードを上げだした。
興奮のせいもあり僕らはハイスピードで奥ラインを進んで行く。
ところが奥ラインを抜けても一向に速度が落ちない。
それどころかNは止まるどころか一層深い闇が広がる道に進路を変えて走っていった。
その道は更に細く、ガードレールの向こうは崖があり、ただ舗装されているだけの本当の山道だった。
僕はその道を通ったことがなく、Nはこの辺りの地理には僕よりは詳しいので
裏道なのかな?程度に思いとりあえず先導を任せて後ろを走っていた。
その道は上がり勾配がキツく、一車線しか無いためカーブを抜けた先に対向車が来ることを考えて走らなければいけないが、Nは依然スピードを落とさず進んで行く。
正直、僕もそのペースにひっついていくのがキツくて何回か飛び出しそうになった。
ふと思いつく。僕らは今、山を頂上に向かって走っているようだった。
何故そんな場所に行かなきゃならない?休む場所(コンビニ)やNの家へは奥ラインを抜けた別の方向だぞ?
僕は次第にその思いが強くなり、やがては恐怖へと変わっていった。
「こいつはどこに俺を連れて行く気だ?」
止まれ!って意味合いでクラクションを何回も鳴らしたが無反応。
知らない道で、夜で、この速度を考えると前を走るNの横に並ぶには相当の覚悟がいる。
しかし得体の知れない恐怖の方が勝り、僕はNを止めることにした。
何回かトライしてやっとのことで横に並び「取りあえず止まれ!!」って大声で叫んだ。
Nは大人しく段々と速度を落とし、道路の脇にバイクを停めた。
Nはゆっくりとバイクを降り、ボーっと突っ立っていた。
僕は半ばキレ気味だったがある程度抑えた声で「どこ行くん?」とNに訪ねた。
N「・・・」反応なし。
僕「なんかしらんけどもどろーや」
N「・・・」反応なし。
僕(キレて)「なんとか言えや!」
N「・・・」反応なし
僕はその時、ヘルメット越しのNの顔を間近で見た。
無表情だった。
Nはただ僕の顔を見て何も喋ろうとしないし、感情の変化もなかった。
僕はこの時ほど無表情が怖いと感じたことはなかった。
僕は本当に怖じ気づき、飛び乗るようにバイクに乗り来た道を引き返す。
道は降りるだけの一本道なんで迷う心配はなかったがNが追いかけてこないことをひたすら願い、バックミラーを何度も確認し、できる限りの速度で下山した。
この話は以上です。
Nに関してはそれっきり連絡もしてないし、連絡もこない。ただよくあるような死んだ、とかいう話がないのはなによりだった。だけど僕はもう、Nに会うのが怖くなっていた。
一体、あの日の夜は何が普通で何がおかしかったのかがよく分かりません。
もしかしたら僕がおかしかっただけだったのかもしれません。
ただ言える事は異次元、異空間というものが存在したんじゃないか、と僕は思う。
もう一つ不思議な事は、この話はその日からしばらく頭に残ってたんだけど(嫌でも残るよね)半年経ったくらいから(正確ではないけど)僕の記憶からポロッと消えていた。
それがつい最近僕の記憶の中に戻ってきたのでこの話を書いてます。
文章が長い上、分かりづらかったかもしれません。
長々と付き合って頂けた方、ありがとうございます。