圏外
圏外という世界を覚えているだろうか?
正確に言えば「ほぼ圏外」が正しい。
たまに4Gメーターの1番左が黒くなる事があるが
見えているのは常時「圏外」の二文字。
先日観た映画の影響もあってか、圏外という文字が
大気圏外という錯覚を与えてくれちゃって、
脳内映画変換が好調な事を教えてくれる。
いや..そうではなくて..
俺はこの圏外という世界を完全に忘れていた。
でも年に1、2度は訪れているのにおかしい。
それに圏外という文字をこんなに目にしたか?
...!?
そうだ、犬から桃太郎に変更してから、
この地が圏外になり始めていった。
圏外という事に最初は戸惑う自分がいた。
勿論、屋外に出れば微弱だが電波を拾い、
4Gメーターも左側1本が安定する。
ただ、周りに何かあったら..。
緊急を要する何かが起きてしまってはないか。
..
冷静になって自分自身を診断してみた。
これは便利になり過ぎた、いや、慣れ過ぎた
現代っ子病であるという診断結果に至ったのは、
圏外に戸惑いを感じてからそんな時間は必要無かった。
まだインターネットというものが、
存在していない頃はどんな夜を過ごしてただろう。
テレビが自分の部屋に無かったあの頃は、
ラジオを聞いたりカセットを聞いたり、
なんとなく覚えたてのギターを弾いてみたり。
車の免許を手にしてからは毎晩友人宅や、
逆に友人達が集まったり、目的なく真夜中の
ドライブに行ったり、意味もなく真夜中の公園に
行って缶コーヒーにタバコを吸った。
覚えたてのバーで優しめなアルコールを飲んだり
バンドのメンバーとその日のスタジオテイクを
機材車の中で聴き、あ~でもないこ~でもないと
語り合ったり、夜な夜な曲を作ってみたり。
今思えば現代よりももっと濃い時間、
もっとキラキラした時間を過ごしていたような
何でか分からないけどそう感じる。
単純に若さだろうという気もするが、いや、
あの当時からインターネットがあったら、
今思い起こせるキラキラ感は少し霞んで、
もう少し違う感覚なんだと思う。
今、この記事をiPhoneのメモ帳で書いていて、
なんだかこんな夜が嬉しかったりする。
今から急に外でマフラーのうるさい車が止まったり
何となく決まった感じのクラクションが鳴ったり
少し遠くの山小屋風の場所へ行けば仲間が
暇そうにコーヒー飲んでるんじゃ。
圏外というのは便利な世の中での圏外であって、
不便なあの頃にとっては普通な感覚、
むしろ全て圏内だったと思う。
もしここでもっと長く生活する事になったら
現代でいう圏内で毎朝コーヒーと煙草を手に
こんな長ったらしい記事になってしまうかも。笑
色んな想いを呼び起こしてくれた。
そんな圏外での最初の夜。
8月12日(日) AM3:04
