
Artist: Ulver
Album: Flowers Of Evil
Year: 2020
Genre: Synthpop, Art Pop, Art Rock
ノルウェーのエクスペリメンタルロックバンドUlverの11枚目のアルバム。ブラックメタルから始まり時期によって音楽スタイルを変化させてきたUlverは前作「The Assassination Of Julius Caesar」からシンセポップとなっています。彼らは一つのジャンルを試す場合短期間でもとことん追求するオタク気質なところがあり、最近はシンセポップを極めようとしているようです。抜群のメロディーセンスとKristoffer Ryggの歌心があるので、Depeche Modeフォロワーから片足を完全に飛び出して個性を確立しています。前作はリリース当初よりも3年半経過した現在のが良く感じます。確認したら2017年の年間ベストでは15位に選んでたけど今の感覚ならもっと上位です。その理由の一つにUlverがシンセポップを2020年でも続けてくれたことが挙げられます。「Flowers Of Evil」はロック界にも多大な影響を与え続けているボードレールの悪の華をタイトルにしてるけど、各曲の歌詞を見るとかなり詩的で古いゴシック韻文をオマージュしているように思います。ジャケに使われた写真は1928年の映画「裁かるるジャンヌ」のワンシーンで、この映画はゴダールの「女と男のいる舗道」でも引用されました。ブックレットを見ると「顔のない眼」の場面写真もあります。Little Boyは原爆の名前なので原爆の写真もあります。この曲の歌詞の中にFlowers Of Evilのフレーズが出てきます。Russian Dollは売春奴隷を描いたスウェーデン映画「リリア 4-ever」に触発され書かれました。サウンド面では前作以上にメランコリックで哀愁と郷愁が強くあり、まさに煮詰めたゴシック・ロマンチック・シンセポップアルバムです。歴史の闇を感じながら現在のUlverの魅力と美学を余すことなく堪能できる力作です。