由)理佐の優しさは私だけの物じゃないよね?


ソファーにもたれながらスマホをいじる由依が洗い物をする私のことを見ずにそう問いかける。そんな姿を付き合い立てのころに見たことがない。あれは由依が我慢していてくれてたのか、それとも私との関係がこの姿を見せることができるほどの域に達したのか

いや、多分どちらも違う。きっと今日が由依と私の最後の夜になるだろう


理)そうだね。自分で言うのもあれだけど、きっとみんなに向けてる物だと思う。


由)ふっ、流石タラシだね。


そう小馬鹿にした笑みを溢した由依を見て、私の心は少しだけ締め付けられた。親指のささくれに滲みる食器用洗剤が少しうざったいと思った


由)私たちってさ、正直身体の相性いいし、今までセフレになれるタイミングっていっぱいあったよね。

理)何その言い方。一応私はそれなりに由依のこと好きだったんだけど。

由)あー、それは私も同じだから。

理)だったらそんな言い方しないで。

由)ごめん。


まだ別れてもないのに、なんでこんな他人みたいな会話してんだろ。やっぱり私たちはちょっと変だ。でもこの関係であったからこそここまで付き合えてたんだろうな


由)…ありがとね。

理)こちらこそ。


きっと、今由依は私のことをちゃんと見てくれてるんだろう。一方の私は絶対に由依を見ない。見たらきっと色んな物が込み上げて来て、目が熱くなって、引き止めてしまう

行かないでって、まだ愛してるって…


由)理佐が私の名前を何度も呼んでくれたこと…あれ実はすっごく嬉しかったんだ。

理)っ、

由)多分、理佐が優しいせいで私たちの心は離れちゃったんだろうね。

理)それは、、嫉妬?

由)どうだろ笑、もう覚えてないや。


嘘だ、今の由依の声色は嘘をついている時。3年も連れ添った彼女を舐めないで欲しい。最後ぐらい素直になりなよ

…なんて、私が言えたことじゃないか、、


由)ねぇ理佐、


キュッ


理)ちょっ、洗い物が、、


ギュッ


理)ゆ、由依、、?

由)愛してた…最後までちゃんと、、大好きだった、


由依は蛇口を閉めて私を背中から抱きしめた。いつもの由依の匂いに安心してしまう私が憎い。最後にマーキングしないでよ…忘れられなくなるじゃん、


理)私は…今でも由依をっ、

由)やめて。

理)っ、

由)中途半端な言葉は別れが辛くなる。


そう言って由依は抱きしめる腕を更に強くした。それがどうしても痛くて、愛おしくて、冷たい


由)理佐、言って。

理)…。

由)理佐のこと好きになれてよかった、、

理)うん、

由)出会えて…よかった、、、

理)っ、うんっ、、

由)私がいなくても、、元気でね?

理)…由依、

由)はい、

理)私と………別れてください。


終止符とも言えるこの言葉で私たちの関係は終わりを告げた。由依と過ごした日々は濃すぎる、どんな瞬間も由依の顔が頭にチラつくんだもん


由依、私も愛してたよ。






















END.