最後の夜。

しぃと過ごす最後の夜だった。

姉宅にいた時はさすがに自重したけど、それを除いてこの一週間、ほとんど一緒に過ごした。



普段彼女にもできないようなことをした。やったら普通に怒りそうなこととか。

文化や価値観が違うからかな。

怒るどころか、新鮮だったみたいで吃驚したり爆笑したりしてた。

色気のカケラもねぇw



俺らの間に特別な感情は存在しない。

少なくとも俺は。

大切な可愛い女の子だけどそれ以上でもそれ以下でもない。

「お互い楽しめばいい。」

そういう始まりだしそういう約束。

約束は、守らないとね。



ぎりぎりだったな。リミットに間に合った。

俺の気持ちのリミット。

割り切りができなくなってしまう直前だったかも。

俺の気持ちが傾いてしまう前に、しぃから離れられて安堵してる。



俺は、つい最近・・・こっちに帰るまで結構病んでて。

それは。

次から次に来る試験のストレスだとか。

表側の俺を保つ為に強いられる精神的苦痛とか。

今乗っけられてる所謂「社会勝ち組レール」を脱線しないように進んでる滑稽で憐れな自分への自嘲とか。

周りのそこはかとない期待とか。

そういうおぞましいものを攪拌した高濃度溶液。

さながらそんなもんだ。

そういうのはきっと誰だって抱えてる。言わないだけで。

でも弱くてずるい俺は誰かにぶちまけたかった。見栄っ張りだから、誰にも言わなかった。

わかってほしくて泣きつきたくて逃げていいよって言われたかった。



でもしぃに会って過ごしてたら、いつの間にかそういう濁りが少しずつ澄んでいった。

なくなったわけじゃないけど、薄まった。

どうしてかは、上手く説明できない。

しぃは何にも事情知らないし何も言ってない。

ただ体ごと受け入れて笑い合ってくれただけ。

あいつって実はすごいのかもな。セックスセラピスト?w

性問題を解決するセラピストじゃなくてセックスを用いて心の問題を解決するなんて、すげぇ子。



最後の夜。

いろんな気持ちをこめてキスをしてありがとうを言った。

こんな俺を見てくれて。覚えててくれて。

笑ってくれて。受け入れてくれて。


しぃはやっぱり、まっすぐ綺麗に笑う。