冷たいのかも、しれない。 | raspberryschool906さんのブログ

冷たいのかも、しれない。

去年の夏に胃に癌が見つかった店長が。
土曜日に亡くなった。
私はちょうどオフ会で。
同僚から来たメールでやっぱりと思った。


先週の水曜日に、店長が事務所に顔を出したときの話を聞いていた。

ちょうどそこにいた、中国人でお店の細かい雑用をしてくれてる子から。
元々痩せてたひとだけどますます痩せてしまっていたこと。
ここ数日はゴハンもまともに食べられず、事務所で柔らかく茹でたうどんでさえ、すぐに吐きもどしてしまったこと。
小さい声と、生きようとする気力さえもなく感じた話し方。

ああそうか、長くないのか。
と。
話をきいたとき思っていたのだ。
だから、やはりと。
メールを見て、思った。

月曜からの仕事は、悲しみのふちにいるママを支えなければと思いながら週末を過ごした。
楽しいお酒を提供するのが私たちの仕事。
お客様には、元の店長が亡くなったのなんて関係ないのだから。

そして今日、昔馴染みだが質の悪いFさんが来た。
カウンターで部屋が空くのを待ってていただき、部屋をご用意したとたんに彼は言いはなつ。
「店長死んだんだってな、今日は店長の為に歌うかキラキラ
…あ、オマエなに目をうるませてんダヨ~(笑)」
元々好きな客ではないし、もう入らないつもりで、低く本音を言ってしまった。
「目が潤んでるのは目が悪いからですよ。
泣いて店長が生き返るならいくらでも泣くがそうじゃないのに仕事中泣くほどヒマじゃないんだがな」
人の死を茶化すような低俗な人間に嫌われても痛くも痒くもないし、店長と聞いただけで泣けるような純真さはとうに無くした。

実を言うと店長の死を伝えてきた同僚のメールに
「聴いたとたんに出先だったけど大泣きしちゃった」
とやらの文章があり、それさえ無駄に思えたのだ。
ぃや、私に泣いたアピールされても。
と。
出先で泣いたからなんなの?
それで店長もどるの?
業務連絡なら感情や動作はまったくもっていらない。

こんなふうに思うのは冷たいからかもしれない。

でも亡くなった店長も言っていたのだと、今日着物に着替えながら思い出していた。
あれは私の祖母が亡くなったあとに店に出た日。
「思ったより元気に出てきたな」
と言う店長に今日と同じ事を言った。
「だってぐじぐじ悲しんでも仕方ないでしょ。生き返るわけでもねぇのに」
「それもそうだ�(笑)どうせなら笑顔で送られたいよな」


私だけ、なぜか名字でしか呼ばなかった店長。
体調を崩して後任に私を名指した店長。
店の女のコとしてより、男みたいな扱いしてくれた店長。
私が泥酔した時は、厨房の人と二人でブタの丸焼きのように地下におろしてくれた店長。
常に慌てず騒がず冷静で、マイペース。たまにそれが勘にさわるけど実に合理的に仕事していた店長。

ありがとう。
心から。

あなたの仕事は誇りに満ちていました。
もっといろいろな話をしたかったけど、そう言ったらきっと「やだよ」とあなたは笑うのでしょう。

好きな競馬を目一杯楽しんでください。
好きなお酒を浴びるほど飲んでください。

心から御冥福を。