昔、従弟の結婚式のために伯父伯母と一緒に他県まで行った時、伯母は乗り物酔いがひどかった。
たぶん、もうわたしの感覚はぶっ壊れていて、遺骨になってるのに「伯母さん飛行機で乗り物酔いしないかな?」なんて考えてた。
お経もあげてないから、きっと遺骨に透明な伯母が座ってるんじゃないかなって…
もはや、伯母とちょっと旅行に行く気分にすらなっていた。
だから、迷惑と思ったけど伯母の遺骨を荷物扱いにしたくなくて、都度、その場の担当者に説明して確認して了承を得て、時には費用を支払って行こうと思った。
でも、周りの人の大半は、楽しい旅行の途中だろうから、周囲への配慮しなくちゃいけない。
申し訳ないけど伯母にはバッグの中に居てもうことにした。
もちろんそれでもどこかの段階で誰かにダメだと言われたら、預け荷物にしたり、手荷物の棚に置くつもりでいた。
朝、お弁当を作って子どもを部活に送り出した後、わたしも出発した。
伯母が入っているバッグのベルトがスーツケースの持ち手を通すとピッタリで、めちゃくちゃ安定感!
バッグと一緒に計ると、6㎏くらいあって、片手にスーツケース、片手に伯母は、全く無理だった。
荷物扱いしたくない。とか言っておきながら、荷物扱いしちゃってるけどねっ…
出発の日も雨だった。
少し離れた駅まで行けば、乗り換えが断然ラクなので、タクシーで行った。休日の朝の通勤時間帯の電車はガラガラで、隅の方で伯母とふたりで並んで座っていた。
乗り換えの駅で、だんだん晴れていることに気づいた。
成田が近くなると、すっかり晴れてどんどん温かくなって、汗ばむくらいになっていた。
成田の第三ターミナルに着いて、すぐに受付カウンターに向かった。
わたしが遺骨を持っている事。ライブチャットで確認したら、条件を満たしているので、機内に持ち込みたいこと。を伝えると
「ご遺骨を機内に持ち込めますがサイズは…あ、大丈夫ですね。では、搭乗されましたら、手荷物棚に…」と言われた。
なので「申し訳ないですが、棚には置きたくないの。抱えて乗れるとライブチャットで確認したから、予約の時に前後左右が空いた席を予約したのだけど、今日、他の方で埋まってしまっているなら、空いていたら他の両側がいない席に移動したいし、その両側の席も購入したいのですが…」と伝えた。
予約番号を見せると、タブレットを操作して…「お席を移動しましたから、このQRコードで搭乗手続きできますよ。」と、追加料金は請求されなかった。
スーツケースにタグを付けて、自動荷物預かり機で預けてしまうと、伯母が非常に重い…。
昨日の雨の中を、肩に掛けて歩いたので、もう肩も背筋も腕もバキバキ。
搭乗口のロビーで座っていようと、すぐに手荷物検査に向かった。
手荷物検査の時にも、トレイに乗せる前に係の方に小さい声で「これは遺骨なのですが…」と伝えると、もう一人の係員さんに確認してくれた後、「金属は入ってませんか?」と聞かれ、カバンとコートだけトレイに乗せて、伯母はわたしが方に掛けたまま、金属探知機のゲートをくぐった。
もうね。
ここまでで、みなさんの対応に泣きそうなのよ。
搭乗ゲート前のショップで大量のお土産菓子とサンドイッチとコーヒーを買って、伯母と待合室の窓際のシートで青空と飛行機を眺めながら「ごめんね。わたしだけサンドイッチいただくわ。」「ごめんね。わたしだけコーヒーいただくわ。」と自分でも可笑しくて仕方なくてニヤニヤしながら、昼ごはんを食べた。
絶対に、傍から見たら危ない人よね。
飛行機に乗ったら、それなりに席は埋まっていたが、満席ではなく一番後ろから2列目の席だった。
後ろの席は1列空いていた。
まずCAさんに相談した。
小さい声でこそっと「すいません。これは遺骨なので、できれば荷物棚に上げたくないのですが…」
するとCAさん…
「ああ!遺骨でしたら、離着陸時に抱えてお乗りに乗れます。」と大きな声で言った。
周りの人たち、一斉にビクッっとして、視野の隅でこちらを確認している。
ははは…すいません。
伯母は優しくてとてもカワイイ人なので大丈夫ですよ。
でも、他人は気分が良くないですよねぇ…
ただ、周りのお客さんが、わたしが離着陸時にカバンを抱えていることを不審に思ったり、それをCAさんにクレームを言ったりすることを回避できるので、これは正しかったと思う。
それに、上空でシートベルトのサインが消えたら、となりの座席に置いていいと言ってもらえた。
飛行機は無事に離陸して、バウチャーで伯母が好きだったマフィンを購入した。
窓から見える青空と雲の景色を見ながら、伯母もこんな天国に行けるといいなと思った。
でも、そう思いながらも、「伯母さんは実家から離れたくなかっただろうから、連れてきてよかったのかな?」って気持ちと…
「そこに居ても、伯母さんを大切にしてくれないから、どうか連れていくことを許してほしい。」って気持ち。
それは、いつも伯母について決断する時、わたしの心の中でぐるぐるめぐる考えだった。
もう本人に聞けないからなぁ…と思いながら、
ふと、いつも冷たかった伯母の手を、撫でて温めてた感触と「温かい?」って聞くと、にこっと笑う伯母を思い出して、悲しくて淋しくて、窓の外を見ながら泣いていた。
シートベルトのランプが消えてしばらくすると、ひどい乗り物酔いの人が、トイレからわたしの後ろの席に運ばれてきた。
ずっと ぐったり寝ているか、吐いていて、とても苦しそうだった。
この辺りの席の人たち… なんだか踏んだり蹴ったりで… ごめんなさい (うちは”踏んだり”の部分)
わたしは、帰ってから知りましたが…
少し前の記事ですが、各社このような対応をしてくださるようです。参考までに!