昨日の荒れた天気がウソのように、雲一つない青空だった。

 

バタバタと身支度をして、持って行くものを車に積み込んだら、伯母さんに手を合わせ、

「伯母さん…この4日間、毎日あちこち移動して忙しなかったですね。今日で、落ち着きますからね。もうひと頑張りです!」と言って風呂敷に包んだ。

 

お寺に着いたら、玄関にご住職さまが居たので挨拶した。

「この度は、無理なお願いを引き受けていただきありがとうございます。お忙しいところ大変申し訳ありません。」とお土産のお菓子をお渡しした。

ご住職さまは「こちらこそ、お父様からご事情は聴いております。わざわざ帰省していらっしゃったそうですね。今日は、この後、しっかりおつとめをさせていただきます。」と仰った

 

本堂に入るのは、30年ぶりだろうか…父方の祖母のお葬式に来た以来だった。

とても立派な本堂だった。

 

え?こんなに広かったっけ?こんなに金色の装飾が垂れさがっていて豪華だっけ?と思いつつ、伯母の遺骨を渡して、祭壇に安置してもらった。

 

最初に従弟Kとその息子Yちゃんが来た。

従弟Kに合うのは7、8年ぶりだけど、19歳になった息子Yちゃんに会うのは初めてだった。

 

次に、伯父伯母と関わることになった時、母と一緒に上京してきた伯母が、従弟O君の運転で来た。

伯母は、股関節が悪くなって、杖をついて歩いているが、それもやっとだった。

 

これで、伯父側の3姉妹(伯母、姉伯母、母)が揃った。

 

時間になり、ご住職さまが来た。

伯母の戒名を説明してくれた。

幸せがみんなに広まるという意味の戒名を付けていただいた。

そして、わたしに「伯母様は、向こうでどのような葬儀をされたのですか?」と聞かれたので、「お経などはあげておらず、みなで棺に花を入れて、火葬しました。」というと、「あ、火葬式だったんですね。わかりました。」と仰った。

 

もう、すっかり気も緩んでいたので、あの時のことを思い出すと、涙がどんどん出てくる。

またマスクがドボドボになる。

たぶん、無念なのは伯母より、わたしの方だったのかもしれない。

 

バッグからハンカチを出して涙を拭いて、数珠を出してふり返ると、みんな椅子に座っていた。

わたしが端の方に座ったら…

 

父「おまえは真ん中だ!喪主!」

 

「え?滝汗」と言いながら時間も無いので真ん中に座った。

 

ああ、お経ってこうだった。と思いながら、みんなで合掌し、礼拝して、お焼香をした。

 

祖母はこのお寺に毎日通っていたようだけど、わたしたちは特別信心深い家庭ではない。

クリスマスもお祝いするし、初詣にも行く、お葬式や法事でなければ、お経など聞いたことは無いし、お彼岸にしかお墓にも行かない、家に仏壇も無い。

なんなら、祖父や伯母はキリスト教。

 

たぶん、日本の普通の家。

 

ただ、両親は祖父母の葬儀を出したし、商売をしていたので、たくさんの葬儀に参列したり手伝いに行っていたと思う。

人生は経験の積み重ねだし、引き継ぐものだから、本当は子どもたちも連れてきたかったです。

 

みんなで自宅に戻ってきて、慌ただしくお茶を入れて、お弁当を配り、トイレから戻ったら、みんな黙って静かに座ってる。

どうしたの?なに?と思ったら…

 

父「おい!喪主!挨拶しろ!!」

 

はぁ?なんですと?

((((;゚Д゚))))

 

そういうことはね!!

前日に言っておいてもらわないとーーー!!(`Д´)ノ

 

でも、みんな待ってる…

 

「え、、、

 ほ、本日は?

 み、みなさん、お、お忙しい中、お集まりいただき??

 ありがとうございます…

 おかげさまで、無事〇〇伯母さんの葬儀を済ませることができました。 

 

 え、、、と

 

(父「ささやかではございますが…」)

 あ…

 ささやかではございますが、お食事をご用意いたしましたので…

 お時間の許す限り?お、く、つ、ろぎ?下さい。」

 

わたしの初喪主の挨拶でした。

たぶん、もう少し伯母の笑顔について話したような気がしますが、言ってない気もします。覚えていません。

 

お弁当のフタを開けると、伯父と伯母が元気な頃、遊びに行ったら二人で「このちらし寿司、味がいいのよ!よく食べるの!」と出してくれたものにそっくりのちらし寿司が入ってて泣けました。

 

 

お経をあげてもらうと、やっぱりほっとする。

やっと終わったような気がする。

伯母にも、青い空にすすむ道が開かれただろうか…

 

久しぶりに集まった親戚たちみんなで、わいわい話をして、三姉妹も伯母に数回しか会ったことが無いし、従弟たちは伯母に会ったこともないので、伯母がどんな人だったのか話をしたら、みんなと伯母の距離が縮まった気がした。

 

こういう葬儀をして欲しかった。

改めて親族だと感じる、みんなで心を寄せる集まりを…。

 

もう、伯母は親族として、ちゃんと仲間入りできたと思う。