この日が終われば、伯母とお別れ。

 

伯母は、わたしの目に見えない存在になってしまう。

もう、あのいたずらっ子のような、かわいい笑顔はわたしの心の中にしか存在しない。

 

わたしは、伯母とお別れをするために、ここに来た。

今日、わたしは穏やかに伯母とお別れをするために、全てに耐えて全て尻ぬぐいすると決めた。

だから、今日はだれにでも頭を下げられるし、人の失敗もカバーして、どんな人の失言も許そうと思った。

 

 

しかし、ここからのたった4時間が、とても忍耐が必要で、とても長かった…。

 

 

伯母とわたしたちを乗せた黒いワゴンは公営火葬場に到着した。

リフトで下ろされている間、駐車場から歩いてきて、後ろに居た妹さんのことを旦那さんは「喪主なんだから」と背中を押して棺の近くにやった。

 

喪主か…

ならば霊柩車の助手席に座って、運転手さんに心づけとか渡してもらいたかった。

私は、全て準備するとか言っておきながら、用意しようとしてすっかり忘れてしまいましたよ! 

チーン ああ、忘れてた…

 

でも、きっと伯母は妹さんのことが好きで、近くに居て欲しいと思うから、残り短い時間だけど近くにいてあげてください。

 

伯母はリフトで運ばれ…

お坊さんも呼んでいないので、あっけなくに扉の向こうに行ってしまった。

泣いているのは、わたしだけだった。

 

 

この後の、家族の控室も予約しておらず、食事も発注していない。

公共施設なので、前日の夜ではどうにもできなかった。

 

なので「わたしたちは、お昼を買ってきたので、ここ(待合いロビー)で待っています。どうぞお疲れでしょうから、近くに個室がある割烹料理屋さんがありますので、食事をしてきてください。1時間半後くらいに戻ってきて下さい。」と妹さん夫婦ご一行様を促したけど…

 

全然、行かない…

わたしが(食事代を支払うために)一緒に行かなければ、ダメだったかもしれないと後から思う。

 

皆さん、売店で分骨の骨壺をワイワイ楽しそうに選んでいる。

それを見た担当者さんが、チベットスナギツネのような目で、めちゃくちゃ引いてるけど…

 

でも、伯母さんに似合うキレイなのを選んであげてください。

 

 

わたしもおなかが空いたから、早く食事へ行って欲しかったけど、全然、行かない…

行かないどころか…子どもさんは、さっき葬儀会場で担当者さんにもらった、亡くなった時の手続きをまとめた手引きを出してきた。

子どもさんは妹さん夫婦とわたしたちと一緒に、必要な手続きを読み上げてチェックしていく。

 

そして、最後に…

 

「誰がやるの?伯母は〇〇家なんだから、〇〇家でやってもらえるんですよね?」

 

 

 

伯母は〇〇家に嫁に行ったんだから…って言い出したのは、

おま、あなただったのか…。

 

と、書類から顔を上げると、妹さん夫婦はニヤニヤしている。

 

ああ…うちの子に言われてる、言われてる…

全部やってよね。

姉はそちらに嫁いだんだから…

 

って気持ちが顔に出てしまっている。

 

 

「それは…たぶん、後見人さんの最後のお仕事だと思いますので、お手続きの方、よろしくお願いいたします。

お近くに役場の出張所がありますよね?

まずは、そこに行ってみてください。

わからないことがあれば、連絡ください。

お手伝いしますので…」

 

鏡のような凪の心で、跳ね返すことができた。

 

妹さん夫婦も「はっ!」と思い出した顔に変わった。

今まで散々「後見人ですから」って言ってたのに、忘れてるのか…。

 

毎月、伯母の預金から報酬いただいてますよね?

それ、そういうことをする人が受け取るお金です。真顔

 

「わたしは 姪ですので、伯父の事でも、今までいろいろと手続きができないことも多かったんです。

だから、 亡くなった時の手続きなど、尚更、わたしでは受け付けてもらえないかもしれませんので…」

 

と、ダメ押しした。

 

こんなブーメランくらうんだったら、みなさんで食事に行けばよかったと思ってるだろうけど、もうそんな時間も無い。

 

おかな空いた…買ってきたおにぎり食べたい。

 

 

妹さん夫婦も家を出発して、もう5時間くらい経ってるはず。

年寄りに水分と何かしらの栄養を取らせなくちゃいけないのに、子どもさん全く動かない。

 

わたしは自分の分は持っていたけど、自販で皆さんの分のお茶を買っていると、後ろを通った担当者さんが「お疲れ様です。大変ですね。」と声をかけてくれた。

 

「お疲れ様です。

(ええ。お気づきかと思いますが、大変疲れる方々です…)

 ありがとうございます。」

 

ペットボトルのお茶をそのまま「長い移動でお疲れですよね?気づきませんで申し訳ありません。どうぞ、飲んでください。水分を摂って下さいね。」と出した。

紙カップ持ってくるんだった。失敗。

 

わたしたちの話し合いが終わったのを見計らって、担当者さんが清算に来た。

妹さん達が食事に行っている間に、清算しておくつもりだったのに…めちゃくちゃ聞き耳立ててる。

 

すると、施設長さん(住民)が死亡届の申請者になって下さったおかげで、請求されると思っていた6万円あまりの火葬費用が無料になっていた。笑い泣き

 

何から何まで感謝しきれない!!

 

わたしが「ええ!施設長さんに御礼を言わなければ!」と言うと、担当者さんは頷いていたけど…

 

妹さんの旦那さんが、施設長さんの名前を聞いて…

「そういえば、施設長が今日、来るって言ってなかったけ?まだ来てないよな?電話で呼び出すか!」と言い始めた。

 

たぶん、わたしは目を見開いて固まっていたと思う。

 

今のやり取り聞いてたでしょう?

感謝こそすれ、呼び出すって…

逆に、あなたたちは御礼に行かなくていいんですか?

 

って、言うか迷っていたら…

 

さらに「じゃあ、帰りに施設に寄って、文句言ってくか!」と!ゲッソリ

 

ちょっと待ってください!の「ちょ…」が口から出た瞬間、子どもさんが…

 

「えー!?今から、寄ったら大変だよー?真っ直ぐ帰るよ!」って…

 

 

もう、わたしその時、白目になってたと思う。

ここから、車で10分もかからないのに…

 

何も言うこと無い。言うだけムダだ!とげんなりしながら、隣の担当者さんを見たら、げんなりして、わたしと同じように白目見開いて固まってた。笑い泣き

 

 

今日、なんだかすごく長いなぁ…。