これ…ブログに書いたら「盛ってるでしょう?」「釣りだろう?」って言われるかもしれない。 と頭をよぎるくらい、妹さん夫婦は完璧なタイミングで完璧な悪役登場シーンのような到着だった。
妹さん夫婦ご一行様は、わたしにはあんなに会場を間違えないように念を押したのに…自分たちは系列の別の会場に行ってしまっていた。
ロビーに入ってきた瞬間に
「FAXに書いてあった場所に行って、そこで40分くらい待ったわ!!
だって、ここにこう書いてあるんですもん!!!」
と、妹さんはご立腹で喚きはじめた。
「でも、わたしたちは間違えずに、ちゃんと来ましたよ?」という言葉を飲み込んだ。
今日、わたしは穏やかに伯母とお別れをするために、全てに耐えて全て尻ぬぐいすると決めたから。
「そうでしたか。大変でしたね。どうぞこちらにお座りください。」とソファーに座らせた。
それでもまだ「わたしが間違ったんじゃない!ここの人が間違った場所をFAXしたからよ!」と喚いている妹さんに、担当者さんが柔らかい声で「まだお時間はありますから、大丈夫ですよ。」と言ってなだめていた。
さすがの対応だった。
わたしも、そう言える人になりたい。
全員を集めて、まずは、わたしたちにしたのと同じ説明。
亡くなった後、どのようにここに安置されていたか。
どうして、遺体の状態が良くないのかを説明されたが、妹さん夫婦はやっぱりピンと来ていないみたいだった。
そして「施設長さんが、きっと所持品で必要なのはこれだけでしょう。と仰って…こちらを」と担当者さんがテーブルに出したのは、保険証入れだった。
わたしが買った、伯父と色違いの保険証入れ。
わたししか、それを知らない。
一気に涙が止まらなくなった…
みんな、キョトンとしている。
マスクが涙と鼻水でドボドボになって、鼻をかんだり、マスクを交換したりして、話しの輪から外れた。
けれど、続けて施設に残っている伯母の所持品で、何か持って行くものはあるか?と質問されたらしい。
妹さんが即答で「ないです。全て捨ててもらっていいです。いいわよね?ちぃさん?」と言っている声が背中から聞こえた。
もう亡くなってから7日経つのに、施設に連絡もしていないってことですか…
死亡届のコピーを受け取った。
施設長さんが、申請者になってくれていた。
妹さん夫婦が何もしなくても、みんなやって下さる。
それは、伯母さんのため。
その意味や、その有難みをわかっているのだろうか…
決して、お金じゃない。
支払った以上のことをしてくれていることに気づいているだろうか…
ここからとても生々しい表現になります。
でも、その時のことを、忘れないように、自分のために記録しています。
不快に思われる方もいらっしゃると思いますので、ご注意ください。
すでに、出棺の時間まで15分しかない。
棺にお花を入れることになったが、小部屋の窓もドアも全開で扇風機が回っている。
棺の蓋を開けると、かなり臭いがした。
かわいそうに…大変だったね。
がんばったんだね。
たくさんの花を用意したので、花を全身を花で包むことができた。
カサブランカ、トルコ桔梗、蘭、カーネーション、ガーベラ、カスミソウ…
伯母が花束のようになった。
そして、花の色に負けないくらい、伯母の顔は明るく穏やかだった。
伯母は喜んでくれてるだろうか…
出棺の時、妹さんは見送りに出てきた事務の方に「FAXが間違っていたから、場所を間違っちゃったじゃない!!」と食ってかかっていたので、妹さん夫婦に「伯母さんと一緒に乗ってください。」と言ったら、断られた。
ここでぐずぐずしている時間も無いので、わたしと夫が乗った。
窓を開けているが、腐敗した臭いが充満していた。
今は、それからもう2週間経っているが、まだ臭いが鼻の奥にある気がする。
わたしは棺の隣のイスに座って、ずっと棺を撫でて話しかけていた。
やっと伯母とゆっくりできる。
撫でながら悲しくて「伯父さんと遠く離れてしまった事。伯母さんは許してくれるかな…」と言うと、夫は「それだけが、心残りだね。でも、許してくれるよ。」と言った。
また、マスクがドボドボになった。
火葬場に着き、とうとう伯母と最後のお別れが近づいた。