特養に到着して、暖かい空気の中で柔らかい陽射しを浴びて、景色を見ながら伯父とちょっとのほほんとした。
桜が、伯父を歓迎してくれているようだった。
少し早かったので、弁護士さんはまだ到着していなかった。
玄関で相談員さんと理学療法士んさんが迎えて下さり、介護タクシーの車椅子から特養の車椅子に乗せ換えた時、理学療法士んさんは「おや?」って顔をしていたけど、職員のみなさんに挨拶をされて伯父もご機嫌に「ワーォ、ワォワォ…よろしくお願いしますね。」と言っていた。
伯父のおどけたような「ワォワォ…」は、とても久しぶりに聞いた…
こんなにご機嫌な伯父も久しぶりに見た。
わたしは面会室に通され、伯父は理学療法士さんに隣のリハビリルームに連れていかれた。
ゴソゴソと保険証や診療情報提供書やサマリーなど、老人ホームで受け取った書類や、伯父とわたしの印鑑などをテーブルに出しながら、今日、施設長さんから聞いた伯父の夜間の脱走の話や、今日感じた伯父の手の状態について相談員さんに伝えた。
相談員さんは「そうなんですか!少しお待ちくださいね。伯父さまの様子を見てきます!」と言って、リハビリルームへ行った。
しばらくして、理学療法士さんと相談員さんと一緒に伯父が戻ってきた。
やはり右手は力が弱いけど、まあまあの握力があった。
しかし、右足は力が入りにくいが左足は力が強く、1ヶ月の車椅子生活で立ち上がりに不安はあるものの歩行器に掴まれば、右足を引きずりながらも左足の力ですすめるようだった。
理学療法士さん「これだけ左手と左足が強いならば、日常生活で歩行器を利用してもらおうと思います。」とのこと。
びっくり!
相談員さんもびっくり!
ほぼ寝たきりと思っていたので、お部屋も褥瘡予防のマットなどを入れてくだっていたが、スタッフルームに電話をして相談していた。
しばらくして弁護士さんが到着した。
伯父に挨拶をして席に着いたので、さっき到着した時の伯父の様子を伝えると、
「え?ワォワォ…って伯父様、よくおっしゃっていましたね!久しぶりに聞きましたねー!」と喜んでくださった。
改めて挨拶をし、契約の手続きをはじめようとしたころ、伯父が眠そうだったのと、5日間の隔離部屋の準備ができたと連絡がきたので、「お部屋で横になりましょうか?」と理学療法士さんが言って下さったので、伯父に「いってらっしゃい!」と手を振って別れた。
すぐに入居の契約書を読み上げ、書類に署名し捺印し、他のたくさんの同意書も全て説明していただいて、署名し捺印した。
緊急時の対応と希望の看取り方は、看護師の伯母が言ってくれたことをベースに、姉妹たちが遠方だが来てもらって、個室などに移動できたら付き添って看取りたいことも伝えた。
伯母の状態によっては伯父の危篤時に呼びたいことや、伯母の危篤の時に伯父を逢いに連れて行きたいということは、伝えられなかったが、それも伯父の入居後の体調次第なので、様子をみて相談することにした。
全て書類を書き終えたら、すでに16時。
これから、役所に行って転入手続きをしなければいけない。
伯父をお願いして、タクシーを呼んで、しばらく弁護士さんと一緒に桜と少し傾いてオレンジ色の太陽を眺めていた。
タクシーで役所に行く途中、弁護士さんが…
「本当にいいところですね。よく見つけていらっしゃいましたね…」と言った。
「今日も駐車場の辺りとか、とても雰囲気よかったですね。」と笑った。
なんとなく、必要に迫られたタイミングで調べて、一番最初に興味を持ったら縁があって入居することになる。
それは、母と介護していた祖母(伯父の母)の導きだと思っているんだけど… たまたまかな?
タクシーで15分ほどで役所に到着した。
都心の役所より、少し離れた ある程度の人口がある都市の方が、新しく広い庁舎でサービスも充実していたりするけど、正にそんな感じ。
広いフロアで、呼び出しも窓口の上の大きな画面に番号が表示されて見やすいし、イスもたくさんあって大きくて座りやすい。
緊張が解けて…転入手続きを弁護士さんにお願いして、ほけーっと座っていた。
すると伯父のマイナンバーカードの暗証番号が必要になったらしいが、わからないとのこと。
ふたりで、予想して入力してみたけど、2回失敗。
次、間違えるとロックがかかってしまうので、暗証番号の変更手続きをした。
弁護士さんといろいろ話をしながら、呼ばれるのを待っていると、なんとなく…弁護士さんと姉妹になったような気持ちになった。
アルツフルデイズのワフウフさんとなーにゃんさんは、きっと、いつもこうなんだろうな…なんて考えていた。
閉館時間を30分近く過ぎて、やっと転入手続き終了。残業させてすいません。
わたしはずっとひとりで動いていたし、いろいろ決めてきたけど、こういう時、相談できる相手がいるのは、やっぱり心強いな。
帰りの電車の中で、帰りのラッシュに巻き込まれながら、窓に映る疲れた自分の顔をボーっと眺めてそう思った。
でも、とりあえず…ひと区切りついた。
わたし、お疲れさまでした。