伯父をタクシーに乗せて病院へ向かった。

 

移動途中、伯父と話をした。

 

最初に、伯父の顔をマジマジと見て、

「伯父さん。これは、随分派手にやっちゃったね~」

と言ったら、キョトンとしていた。

 

「痛くない?」と聞いたら、「はて?どこも痛くないよ?」と言いながら、赤紫に腫れた右手を左手で隠した。

 

これは、痛いんだな。

 

伯父なんて少々痛くても「大丈夫!」というのに、昨日の夜は痛いと言ったという。

余程、痛いんだと思う。

 

 

気がまぎれるように

先日、博物館の学芸員さんや大学教授の方、数人で伯父の家にいらっしゃった話をした。

 

家の中に溢れる伯父の作品を、みなさん次から次へと、嬉々として棚やあちこちから取り出しては褒めて下さった。

 

そして、2年前に譲渡する約束をしたものと合わせて、寄贈という形でかなりの量を引き取ってもらった。

誰もいない家に置いていると、カビたりして作品に良くないから、博物館などに寄贈してよいか聞いてみた。

 

すると

「それはうれしいね。みんなに見てもらえるなら、どうぞお持ちになって。」

と言っていた。

 

「こんな腕のいい工芸師の商売道具なんだから、手をこんなにしちゃダメじゃない!!」と言ったら

「ハッハッハ。そうだねぇ。」と言って伯父は笑った。

 

伯父は…

最近、いつ声を出して笑ったんだろう?

 

今日は、調子良く会話のキャッチボールができる感じがする。

わたしのことは、やっぱり誰かわからなかったし、取り繕いで話を合わせてるだけかもしれないし、翌日になれば今日のことは覚えてないかもしれないけど…

 

それでもいいや!ウインク

 

続けて、伯母の話をした。

伯母は、体調を崩して病院に入院していることになっている。

「うんとね…伯母さんは今の老人ホームには、戻って来れないかもしれないのよ。今の施設は人が多いし、体が疲れている時も、お部屋で過ごせないじゃない?もう少しお部屋とリビングとトイレが近くてゆっくり過ごせる、伯母さんが帰って来ても安心なところに移ろうか?そういうところ、探そうと思ってるんだけど…伯父さんはそれでもいい?」と言うと、

 

「そうだね。いいよ。ありがとう。

 迷惑かけてすまないね。」

と言った。

 

翌日になれば今日のことは覚えてないかもしれないけど、ちゃんとわたしの目を見て言っていた。

 

 

そんな話をしながら、ちょっと渋滞したけど15分くらいで病院に着いた。

4200円て…チーン

 

ダッシュで車椅子を借りてきて、伯父を乗せ、お尻の下に敷いていたバスタオルを回収し、伯父の膝にかけた。

 

車椅子の扱いに不慣れなので、慎重に角を曲がり、行ったり来たり何度も切り返したり、人と距離を取り、やっと受付に着いた。

 

予約票を渡しながら…

「すいません。昨日、救急車で来て、今日は脳神経外科でCTの予定なんですけど… それから、昨日帰って夕方ごろから、手が腫れてしまったので整形外科も受けたいのですが…老人ホームに入っていて、なかなか外出できないので、予約してないんですけど整形外科も、今日一緒に受診できると助かるんですけど…」

と、図々しい要望も、全然言える自分に驚いたが、そんな遠慮してる場合じゃない。

伯父の右手の半分が赤紫色でパンパンに腫れている。

 

受付の人も、伯父の手を覗き込んで「あー!ちょっと待ち時間が長くなるかもしれませんが、当日受付で受診できるようにしますね。〇〇番の受付で、そう伝えてください。」と言ってくれた。

 

ありがとうございます。本当に助かります…笑い泣き

 

そして、指定された番号の受付で再び、当日受付で整形外科も受けたいと伝え、伯父の手を見せると驚いて「あらー!!では、今、整形外科も受付しておきますので、脳神経外科を受診してから、もう一度、こちらに来てください。」と

 

ありがとうございます。本当に助かります…笑い泣き

 

みなさん優しくて泣けてきます。