いつもホームから伯父伯母の楽しそうな様子の画像をLINEで送ってもらっていたけど、1年ぶりに会うとその衰え方はものすごくて、万が一、まだ、あの家にふたりで住んでいたらどうなってただろう…と思ってしまう。
1年ぶりにゆっくり顔を見たけど、ふたりとも顔色がよく、肌つやもいいし、何より表情が明るい。
伯母の傾眠はあるものの不穏さが全く無い。
伯父は、1年前まで自転車に乗ってアイスクリームを買いに行っていたとは思えないほど、足元が怪しいけど、相変わらず、ひょいひょい歩くので目が離せない。
待合室の椅子に座らせ、ウォーターサーバーの熱湯と冷水でぬるま湯を作って、ふたりに1杯づつ飲ませた。
すぐに看護師さんから採尿カップをもらったので、伯父を先にトイレに連れて行った。
「このカップのこの1/3くらいまででいいからおしっこして…」って、説明してる最中に、ズボン下げるのやめてね。
以前は、そんなことしなかったのになぁ…と思いながら、伯母と一緒に待っていた。
伯母は以前はすぐに伯父を探して「あの人どこ?」って聞いて来てたけど、そんなこともない。
3分くらいしてトイレの伯父に声をかけると、予想通り 「出ないんだよなぁ~」と…
「ホームでトイレしてきたって言ってたもんね。じゃあ、後からにしてもらおう。」と伯母のところに連れて行き、伯母と交代。
ビニ手をして、パンツを下ろすと、新しい介護パンツに交換されていない…。
だから、伯父伯母を受け取った時に「一応、これを」と介護パンツを渡されたのね。
どこで履き替えらせろっちゅうねん!!!!!
でも、奇跡的に採尿できたので、ホッとしました。
ずっしりしてるパットだけ交換して、これで今日の山場は終了したことになるよ。
つぎに診察室に伯父が呼ばれたけど、伯父だけで診察を受けられない。
なにせ自分のことは、とっくに全くわかっていない。
伯母はじっとしてくれてそうだけど、万が一、動き回ると困るので待合室にひとりで置いておくこともできず…
個人病院にしては広めの待合室を、わたしが右手で伯父を支え、左手で伯母の背中に手をまわして抱えて移動する感じ…。
カバディかよ。
診察室のドアを抑えている看護師さんに「呼ばれたのは旦那さんだから、奥さんは来なくていいのよ!」と言われたけど、「すいません。どちらもひとりでは無理なので…」と言い、診察室に入って伯父と伯母を座らせた。
そこまでで、呼ばれて5分経っている。
待合室には、幸いにもわたしたちしか居ないけど、院長先生と看護師さんがちょっとイライラしているのがわかる。
そして、ドアも閉まらないうちに、ふたりともイライラしたように口々に「こちらはどなたですかっ?」とわたしが誰か伯父に聞くけど、伯父は答えられない。
院長先生も看護師さんも、「どうなってるの?」という表情でわたしを見る。
「わたしは姪です。ふたりに子どもはいないので…都心に居たんですけど、ふたりとも認知症になってて、私の家の近くのホームに呼びよせました。今日はホームの訪問医から、レントゲンなど無いので、できれば年に1回の健康診断を受けてほしいと言われて、受けに来ました。」
そこで、一気に空気が緩んだ。
口調が優しくなった。
予約の時に、ふたりとも重度の認知症であることを伝えていたし、問診表に認知症と書いていたが、伝わってなかったみたい。
その後は、めちゃくちゃ親切に診てくれて、看護師さんたちもとても親切にしてくれました。
勝手に、伝わってると思っちゃだめね。
迷惑をかける相手には、毎回、その場でちゃんと言わなきゃ。
伯父は既往症や飲んでいる薬を聞かれたけど、やっぱり「お陰様で、今まで元気で病気なんてしたことはありません!薬も飲んでいません!」と言うので…
「高脂血症と認知症のお薬を飲んでいます。すいません。お薬手帳を忘れたので、後でホームに問い合わせます。私が把握しているのは、甲状腺腫瘍があって、年に1回エコーを受けるように言われています。あと、ちょうど2年前に脱腸で手術しています。」
というと、伯父が…
「そうなの!?手術したの?わたし?あらあら…」
あらあらは、私のセリフだよ。
伯母の既往症は本当に誰も分からない。
乳がんは知っていたが、腎臓病で片方を切除したと聞いていたけど、腎がんだったと入居後に知ったし、それらをどこで手術したのかも、いつまでフォローをしていたのかも分からない、入居前から何かの薬を飲んでいたけど、それは何がきっかけで、何の薬か分からない。
後見人の妹さんにも聞いたけど、全く把握してなかった。
それを説明すると、院長先生はちょっと呆れ気味でしたが、仕方ないよね。
ずっとふたり暮らしの年寄りが、ふたりとも認知症を発症してしまったんだから。
こんなことって、これから日本中で増えると思うんだけど… 本当に国は対策を考えてほしいね。