介護保険改定によるサービス内容の変更があり、同意書類に署名捺印をするため…ついでに、春夏用の服や布団を持って、老人ホームに行ってきました。
月3日~5日のデイサービスが自費ですって!1日5000円らしいから、全然同意したくないけど!!
二人分の荷物なので、一人で持って行けず、下の子が一緒に運んでくれました。
玄関のガラスドア越しに椅子を用意してくださって、伯父と伯母が連れられてきました。
一目見て…
わたしのことは、全く覚えていないのが分かりました。
言葉にはしていませんが、わたしを見ても「知らない人がガラスの向こうに居るのに、なんでその前に座らされるの?」という表情。
スタッフさんが、老人ホームの電話から私の携帯にかけて、受話器を伯父に渡しましたが、最初は電話を耳にあてることも忘れていました。
「姪御さんですよ。」と言ってくれたようですが、「はて?」と顔に書いてあります。
伯母は、私の顔を見て 「知らない人よ!なんでここに座ってなくちゃいけないの?」と椅子から離れようとして、伯父に止められていました。
やっとスタッフさんが伯父の耳に受話器をあてて、話ができました。
「伯父さん、久しぶり!!●●(母)の娘のちぃです。」というと…
「ああ。そうなの?随分、大きく育って…わざわざご苦労様だったね…」
もう、わたしのことは、全く覚えてないことが確定しました。
「伯父さんの家の工芸品の黒いのをいくつか授業で使うので欲しいと、学校の先生がおっしゃる人がいるんだけど、差し上げていいですか?」
もう去年、すでに差し上げてしまったのだけど、伯父が家の事をどれだけ覚えているか知りたくて聞いてみた。
「工芸品?黒い?」
「伯父さんたくさん作ってお家にあるじゃない?覚えてる?」
「…。ああ、どうぞどうぞ、差し上げて!」
いやいや…覚えてないでしょ?
工芸品のこと、忘れてるのか…
認知症って…
その人が人生で、本当に長い間 接していたモノや人も、何もなかったように忘れてしまうのね。
伯父と伯母は、一緒にいるから覚えているけど、離れ離れになったら、お互いのことも忘れてしまうんだろうか…。
そんなことを考えながら、伯母に手を振っていたら、ニコッと笑って、手を振り返してくれたので、伯父に電話を代わってもらったけど、伯母も受話器を耳にあてることも忘れて、黙ってきいているだけでしゃべらない。
これ…
妹さんたちが面会に来て、この様子なら、相当落ち込むな…
そうこうしているうちに、伯母は席を離れて午後のレクへ向かってしまいました。
伯父とふたりになったので…
「伯父さん。ここはどう?お食事は美味しい?日常生活で困ったことはない?」
「うん、もちろんだよ。でもね、明日か明後日には、家に帰ろうと思ってるんだよ…」
「今、コロナが蔓延していて、かかっても病院に入院できないの。これからも、続きそうなの。ここだと安心して生活できるでしょう?」
「そうね。ここでは不満はないよ。」
「のみなさんも、良くしてくれるでしょう?」
「うん。うん。」
「そう。伯父さんが気に入ったなら、ずっとここに居ていいのよ。私は、ずっとここに住んで欲しいのよ。」
「そうなの?分かったよ。しばらくね…しばらくここに居させてもらうよ。」
そう言った伯父の安堵した笑顔は、今まで見たことが無い表情でした。
伯父は間違っても自分から「ここに居させてくれ!」などと言ったりしないから、わたしからお願いしてしばらく居てもらうことに納得してもらいました。
書類を書いて伯父の担当相談員さん渡した時にも、そう言った時の伯父の様子を伝えました。
そして、日々、伯父がとても心安らかに過ごせていることへの感謝も伝えました。
すると、私が差し入れたスケッチブックをいつも抱えていて、絵を描いたりしているし、午前の頭を使うレクなどでは計算にもチャレンジしていることを教えていただきました。
今後、伯母が特養に行くことになり、伯父の介護度が上がって、今の自立度が高い老人ホームに居られなくなる時のために、気になっているグループホームの見学に行ってこようと思います。
先だって一度、伯父はどのような経過を辿るのか、認知症の先生にお話を聞きたいと思いました。
それがわかれば、時期をみて先回りして対策もできるし…。
申し訳ないけど、伯父にあまり時間を使えません。
私は、自分の病気の治療も終わったので、経過観察しながら、仕事を探して働かなければいけないし、小学生の子どもを育てなければなりません。
でも、伯父と伯母には幸せで過ごして欲しいのです。