朝、伯父に電話をした。
ちゃんと生きていた。
入れ歯も入れていて、活舌が良かった。
今日は歯医者の予定だけど、これから行って様子を見て、ダメそうならキャンセルしよう。
老人ホームへの入所を前倒しにしたいので、早く入れ歯を完成させたかった。
下の子を送り出して、洗濯物を干して出かけた。
いつものように1時間ちょっとかかって、伯父の家に着くと、手を洗ってから、伯母に挨拶をした。
定位置に座っていたが、鼻の下が濡れていた。
「あれ?伯母さん。鼻水?」と拭いたら、コンコンと咳をした。
昨日のままの服装。家の中が少し涼しかったので、ヒーターを入れた。
伯父は、パジャマを上着にして、いつものあちこち穴の開いたボロボロの作業ズボンを履いていた。
何回か説明して、それでも覚えてもらえなかったから、大きく名前を書いて貼っても、2階の寝室の枕元にある引き出しに自分の服が入っていると覚えてくれず、引き出しの前の段ボール箱に脱いだパジャマのズボンが乗せてあった。
この段ボール箱が、長い間、伯父のクローゼットになってた。
ボロボロの作業ズボンやもう黄ばんだ下着(捨てるために袋に入れたのに拾ってきたもの)しか入っていない。
伯父に2階に来てもらって、引き出しから、新しいズボンと長袖ポロシャツと靴下を出して、伯父に「ここに服が入ってますからね。」と説明して、その場で着替えてもらった。
「伯父に、体調はどうですか?昨日から、変わったことはないですか?昨日は大変でしたね。
ごめんね。途中で少し休憩を取ればよかったね。私が気づかいが足りませんでした。ごめんなさい。」
「いいえ。いいよ。こちらこそお世話になったね。
いやー。この年まで、こんなに元気で健康で居られるとは思わなかった。感謝感謝だよ。」
「 …。(いやいや。昨日、救急車で運ばれたし…。気持ちは元気だろうけど、健康じゃないんだよ。) そうだね。」
手足に違和感や痛みもなく、会話もしっかり?できているので、徒歩5分の歯医者にゆっくり歩いて行くことにした。
伯母の妹さんは留守だったので、伯母は、ひとりで留守番になった。
いつも歯医者は10分もかからず終わるので、すぐに帰ってこられる。
ふと、先週の惨劇を思い出したが、仕方ない。
預ける人や見に来てくれる人は居ない。
伯父とふたりで、暑くも寒くもない気持ちいい風と よそ様のお庭に咲いてるお花の香りを感じながら、ゆっくりブラブラ歩いた。
来年のこんな日に、また、一緒に散歩できるだろうか…。
歯医者も、出来上がってきた入れ歯の調整する処置をして、あっという間に終わった。
来週、完成!!新しい入れ歯を受け取れる。
上下の総入れ歯を着けたら伯父はニヤッと笑って、歯医者さんが私に「どうですか?」と聞くので、「めちゃくちゃ歯並びキレイですね。おじさん、男前でステキですよ。」と言うと、伯父も歯医者さんもみんなでフフフと和やかに笑った。
帰り道、またブラブラと歩いている時に、昨日の話をした。
博物館の方が来たことは、ギリギリ覚えていたが、何を話したかも、救急搬送されたことも、帰ってきて妹さんの家で親子丼をいただいたことも覚えていなかった。
辛うじて、妹さんのお宅で食べた親子丼のことは思い出したが、なぜそうなったか覚えていない。
そんなことだろうな…。と思っていたけど、伯母さんも1日預かってもらったし、晩ごはんをごちそうになったから、妹さんに会ったらお礼を言うようにお願いした。
伯父の家に戻り、家の冷蔵庫を開けたらやっぱり何もなくて、セブンイレブンへダッシュした。
冷凍パスタはちゃんと食べてるようだったので、補充し、たまたま、あんまん もあったので買っていった。
ポテトサラダサンドと、冷凍グラタンとあんまんという、炭水化物祭りのプレートを準備し、インスタントのポタージュスープが無かったかしら?と探している時、コンコンと咳をしていた伯母が、ゴホン!と大きい咳をした。
そして、台所から居間に居る伯母に「伯母さん大丈夫?お水飲む?」と聞くと、伯母が台所を通って洗面所の方へ行った。
伯母さんトイレかな?と振り向くと…
え?伯母さん?何つけてる?
何それ?