立ったまま意識が無くなり、救急隊到着後、意識を取り戻した伯父に付き添って救急車に乗った。

伯父はストレッチャーに寝かされ、酸素マスクと心電図や酸素飽和量などモニターをつけ、血圧を測ってもらった。

 

低っ!!

83/42滝汗

 

でも意識はだんだんしっかりしてきて、自分の名前や電話番号も言えた。

しかし、救急隊の判断では、声をかけて目が開いたけど、しばらく返事ができない状態が続いたのと、歩いて救急車に乗れたが、血圧が低いまま回復しないので、病院へ搬送します。とのこと。

 

かかりつけの病院を聞かれ、去年入院したり、外来に経過観察でかかっている総合病院名を言うと、そこへ搬送されることになった。

救急車の中で、改めて意識消失した時の状況、消失時間の長さや既往症、家族構成と、私が誰なのも質問され、認知症であることも伝えた。

「今日、伯父の工芸品を博物館の方に見てもらって、寄贈する品物を選んでいたんですけど…全て見終わってホッとした時に、立ったまま目を閉じて、顔色が悪くて…。寄贈すると思ったら、淋しくなっちゃったのかも。」と救急隊の方に説明すると、酸素マスクをした伯父が頷いてた。

全くどんだけナイーブな男…。チーン

 

搬送先確認までに10分。発車してから到着するまでの10分の間に3回ほど血圧を測ったが、全く上がってこない。

 

病院に到着してすぐ伯父は処置室に運ばれ、私は救急外来受付を済ませ、検査や処置をされている間、廊下で待っていた。

医師から「今は輸液をして、意識もしっかりしていますが、採血の結果が出たら及びします。一時間くらいかかりますが、今日中に帰れると思います。」と言われ電話やメールやLINEでいろんな人に連絡をした。

 

博物館の方は、ご高齢なのを忘れ、ムリをさせてしまい申し訳ない。と気の毒なくらいお詫びのメールが来たが、全く逆で伯父はどんなに楽しい時間が過ごせたか、迅速に対応していただいて、どんなに心強かったか伝えた。

たぶん、このまま死ねたら伯父は本望だったろう。というほどのシチュエーションだった。

でも、死なない。OK まだ、たくさん楽しい思い出を作ってからにしましょう。

 

そんなこんなしているうち、医師に呼ばれた。

 

血液検査は少し脱水気味だが、ポカリを少し飲めば回復する程度で大きな異常はなく、心電図にも異常はなく、1時間ほど立っていたので、起立性低血圧でしょう!

今は、血圧も100くらいまで回復しています。

 

はぁ?起立性低血圧って、朝礼で立ってると貧血起きるヤツでしょ?それで失禁までするのか聞いてみたら、失神の深さによる。との返事。

どうしても、祖母がくも膜下出血を起こしたとこの事を思い出してしまうが、頭痛が無いので大丈夫らしい。

 

ずっと立っていわけではなく、家の中を歩き回っていたし、伯父がいつも自慢気に「毎日1時間くらい歩いている」と言ってた。まぁ、これは何年も前の記憶なのかも。あとは、1週間前の健康診断の血液検査で大量に採血されたのもあるのかな?

 

重大な病気ではなさそうなので輸液が終わったら、帰れることになった。

 

ただ、医者が言うには「今後、いつでも意識消失は起きる可能性があります。」とのこと。

私は小学生の子供が居て泊まれないし(そもそも泊まれる空間も布団もない)血圧も戻っておらず、帰ってももっと重度の認知症の伯母と二人暮らしで不安なので、今夜だけでも入院できないか聞いてみたが、去年、入院した時の記録を読んだ医師から、入院してもゆっくり休むことが難しそうだ。と言われた。

確かに、前回の入院時は看護師さんから「昼夜問わず2,3時間置きに「これは何の音?」「これは誰の?」とナースステーションに来ていたので、ほとんど寝ていないと思う。」と言われた。

 

はい。チーン

では、今日は帰ります。

 

輸液が終わり、「雨も降っているし、回復したとはいえ、まだ血圧が低くてふらつくので車椅子でタクシー乗り場まで行った方がいいですよ。」と看護師さんに言われ、伯父は車椅子に乗り、失禁で汚れた服をビニール袋に入れて抱え、入院着で出てきた。

 

電話でタクシーを呼び、そろそろ来る頃なのでタクシー乗り場のベンチまでくると、下が吹き込んだ雨で濡れていて、伯父はサンダルを履いているので、私が「ちょっと待ってね。ブレーキ掛けて足置きを上げますから、そうしたらゆっくり立ち上がりましょう。」とブレーキに手を掛けたら、「はい」と返事したにもかかわらず、伯父は車いすからぴょんと勢いよく立ち上がって後ろに吹っ飛ばし、バランスを崩してよろけながらひょいひょいと歩いて倒れる寸前でベンチに座った。

 

人も居たが、初めてちょっとマジギレしてしまった。ムカムカ

 

ムキー「伯父さん!!ちょっと待ってって言ったでしょう!まだ、血圧が低いのよ!転んだら大変じゃないっ!!!」

 

伯父は「えー?はて?」と不思議そうにしている。

気を失って失禁までして、救急車に乗って、ここまで来ているのだよ。いい加減にしてくれ。

たぶん、看護師さんからそう説明されているのだけど、そんなはずない。と否定の気持ちが強くて、認めないのだと思う。

伯父の性格なのか、認知症特有なのか、謎の自分は大丈夫ですアピールにうんざりしているところへタクシーが来た。

 

ムキー「今度は、ベンチからゆっくり立ち上がって、歩いてくださいね。」

 

と言ったら「ホイ!」とふざけた返事をしたにもかかわらず、私が腕を抱えようとすると、また、さっと立ち上がり、ひょいひょいと歩いて、コケそうなところでなんとかタクシーに乗り込んだ。

 

後ろに並んでいる人が、小さい悲鳴を上げて息を飲むのが聞こえた。

 

 

 

もう、何も言うことはない…

 

 

 

 

好きにするといい…

 

 

 

 

私には伯父を守れないし、これでは誰も伯父を守れない。

 

何があっても、誰も悪くない。

 

悪いのは認知症。

 

たぶん。真顔