注意あなた様ご自身のために、想像力は完全に遮断してお読みください。

 

 

 

伯父は上下総入れ歯。

 

しゃべると上の入れ歯が落ちてきて、パッカパカしてる。

固いものが食べられないと言うが、柔らかいものも噛めていない。

長いお付き合いの歯医者さんは高齢になって閉院してしまってから、歯医者には行ってないらしい。

 

でも、これから老人ホームで出される美味しいものを、なんの心配もなくたくさん食べて欲しいので、伯父の家の近くを検索してみたら、老人ホームで訪問歯科医をしていた先生が開業していた。

 

迷わず即予約!

電話で認知症があること。多分、拒否しないこと。私ももちろん付き添うこと。それらを伝えた。

 

 

予約当日。

 

ニコニコ「今日は、入れ歯を見てもらいに、歯医者へ行くよ。」

 

おじいちゃん「え?誰?え?私?検査なら昨日行ったよ?」

 

滝汗「検査?何の検査うけたの?でもね、昨日は日曜日だよ?あれ?どこの病院にいった? 今日は検査じゃなくて、歯医者よ~」

 

おじいちゃん「〇〇クリニック…あれ?□□病院か…」

 

滝汗「昨日は日曜だから、どっちも休みだよ?金曜日にわたしと一緒に□□病院に行ったけど、検査はしてないよ。」

 

(カレンダーを見ながら)

 

おじいちゃん「あれ~?本当だ、昨日は日曜日だな。おっかしいな~。最近、本当に困っちゃうな。で、今日は〇〇クリニックで検査なの?」

 

滝汗「いえ、今日は新しい歯医者さん。」

 

おじいちゃん「え~?歯医者?なんで?奥さんじゃなくて?」

 

笑い泣き「伯父さんの入れ歯、ゆるいでしょう?見てもらうよ!」

 

おじいちゃん「え?検査なら昨日行ったよ?」(ふりだしに戻る)

 

こんなやり取りをぐるぐると30分ほど…汗汗汗

 

確かに、伯父も伯母も金曜日と同じ服を着ている。というか着たまま…

 

ふたりは、まだ金曜日なのか…(納得)

 

 

そしてこの日、伯母はめちゃくちゃ不穏。

 

スーーーっと眠ったと思ったら、伯父との会話に反応して目を開けると「なによ~!ちゃんとやってるわよ!!イヤねっ!!!なんなの?」とか大きい声を出す。

そして、またスー――っと眠る。

 

おお。絶不調。チーン

これは、どうしたらいいんだろうか…。

 

とりあえず「ごめんね。今日は伯父さんの入れ歯を治してくるよ。伯母さんは、もうキレイに治してもらったんだよね?よかったね!」というと、にこっと笑う。

 

かわいい。ラブ この可愛さに騙される。(笑)

 

こちらも平行して、ぐるぐると繰り返し。

 

 

予約の時間に家を出て、歩いていくと伯父宅から5分くらいの近さ。

歯医者さんでは、完全にその時間には1組のみというシステムで、コロナ対策をしていた。

すぐに名前を呼ばれ、伯父は診察室の椅子に座る。

私も向かいの丸椅子に座った。

 

伯父が仰向けに倒されて…

 

お母さん「お口を開けてください。入れ歯外しますね。」

 

おじいちゃん口を開ける。

 

 

 

ゲッソリ

 

 

デカっ!!

 

もう!調整とかそんなブツじゃない!!

 

先生も「どうしますか?( ´∀` )」じゃないよーっ!!

 

どうもこうもねぇ!!

 

新しいの作るに決まってるでしょ!!!

 

 

 

 

あーーー!!!びっくりした!!!

 

怪物が住んでた…ガーン

 

 

 

そして、歯医者さんに

「ちゃんと毎晩入れ歯を外して、歯茎を休ませて下さい!」

と、きっちり怒られてました。

 

 

老人ホームに入る予定であることを伝えたら、いろいろ教えて下さいました。

 

ちゃんと毎日入れ歯を外していないので、骨が下がってしまっているので、入れ歯安定剤が必要なこと。

でも、入れ歯安定剤を使うなら、毎日、入れ歯と口の中を洗わないと雑菌が繁殖して、誤嚥性肺炎の原因になること。

老人ホームでスタッフがやってくれると思うので、相談するといいこと。

入居まで1ヶ月程度と伝えると、入れ歯が出来上がって、入居までに1回くらいしか調整できないので、老人ホームに月2回ほど歯医者が来るはずだから、そちらで調整してもらってください。ということでした。

 

なんか安心感のある先生でした。

診察を終えて、買い物するためブラブラ歩いている時に、伯父も「いい先生でよかった。」と言っていました。

また、来週かかりましょう。

 

その後、伯父と商店街へ向かった。

商店街の入り口に、古い履き物屋さんがあったのをチェックしていた。こういうところには、高齢者用の靴が売ってたりする。

「老人ホームに入ると、上履きが必要なのね。でも、伯父さん…このかかと踏んで履いてるズックしかないでしょ?折角、商店街に来たから、靴を買ってこうよ!!」

と伯父を誘った。靴だけは履かせてみないと、わからないからね。

 

金曜日に、老人ホームの申し込み書に書くサインを私に託したけど、入居することさえ、伯父の本意ではないだろう。

だから、すこしずつ前向きに納得できるように、なるべく一緒に出掛けて、楽しみに入居に必要な準備をしようと思っていた。

 

履き物屋のご主人もかなりの高齢で、話が早い。

「老人ホームに入居するので上履きと、歩きやすい外履きが欲しい。」というと、いくつか見繕って出してきてくれ、伯父にも「最近はスリッパではダメなんですよね。こういう上履きがあるんですよ。」と説明して下さった。

8足くらい試着した中に、すごく素敵で履きやすい靴があって、伯父がとても気に入った様子だった。

2足で7600円。私からのプレゼント。

 

伯父は、小さい頃に父を亡くし、私の祖父は 継父。

戦後だし15歳で家を出て、職を転々として、30歳くらいから工芸家として仕事をしてきた。

ずっと自分で全て賄ってきたから、誰かに何かを買ってもらう経験など無いのだろう。

 

元々、すたすた歩けるけど、2足の靴を入れた袋をぶら下げ、伯父はスキップしそうな足取りで前を歩いて行った。

遠足のおやつを買ってもらって、明日の遠足が待ち遠しい子供みたいな雰囲気だった。

 

これからも外出のたびに、何か買い揃えて行こうと思う。