病院をはしごする合間に、伯父とお昼を食べた。
お寿司をつまみながら、老人ホームの話をした。
伯父は、穴子寿司が噛めなかった。
もちろん太巻きも。
かなり苦戦していた。
やっぱり、歯医者の予約しててよかった...
この日はパンフレットも持って行って施設の説明をした。
お部屋の写真も見せた。
入居者さんが、素敵な笑顔で写っている毎月のお楽しみイベントのチラシを見ながら、一つ一つ、どんなお楽しみイベントか想像しながら話をした。
「伯父さん。私の家に近いし、ここに住もうよ!」
「えー?ここ?」
「うん。実は妹さん夫婦もついこの間、施設見学に来たんだ。伯母さんも一緒に入るのにどうかな?って確認しに来たの。そしたらね、職員さんも感じ良いし、入居者の皆さんもキラキラした顔してたから、良いね!って話になったよ!」
「そうなの?そんなことになってるの?」
「そうだよ。伯父さんは、ずっと今住んでるこの家に住み続けようとしていた?」
「うん。ずっとこの家に住む気でいたなぁ。」
「それはさ、伯父さんに子供が居ないから、誰も世話してもらうことができないし、他に行く場所もから、そう思っていたんでしょう?」
「そうよ。うちは子供が居ないからね。」
「そっか…それは心細かったでしょう?私は娘ではないから、うちに呼んで世話をすることはできないけど…この施設に住んでもらえれば、すぐに行けるんだ。伯父さんと伯母さんを私が助けたり、職員さんに助けてもらいながら、今より安全で楽しく生活できると思うんだ。」
「そうなのかい。全くこんなことになるなんて、頭になかったなぁ。」
「妹さん夫婦もご高齢だから、今、こうして元気でいてくれるだけでありがたいのよ。この年齢ならば歩くのに杖が必要だったり、何かしら病気を持ってておかしくないのに、伯父さんも伯母さんも妹さん夫婦も元気すぎるよね!
でもね、それを当たり前に思っちゃいけない。
妹さん夫婦のどちらか体調を崩されたら、逆に伯父さんはふたりの面倒を見ることができる?今、していただいてる伯母さんのお世話は誰がするの?
申し訳ないけど、もうそろそろ身の回りを整理して、身を寄せるところを見つける必要があると思わない?だから、この施設に住んでほしいんだ。もう妹さん夫婦にも、負担をかけられないと思う。」
「そうか、もうそんな年か…(89歳です)まだまだ、人生もうちょっとひと巻きある気でいたな…」
「あら!何言ってるの?あるわよ!!今元気だから、このホームを選んだんだよ。ちょっと何言っちゃってるのよー!!(笑)
この家にこうして居るより、毎日全然忙しくて、年取ってる暇なんてないわよ!第二の人生と思って、残りの人生を楽しく過ごしてもらうために選んだのに!!伯母さんのお世話は職員さんがしてくれるし…伯父さんは、伯母さんと会話が成り立たなくなってしまって、いろんな人とお話したいんでしょ?ここに住んでるマダムたちは、みんなおしゃれで生き生きしてるから、伯父さんもスタイル良いんだし、格好イイ服買ってあげるから、それを着て、マダムたちに囲まれて楽しく生活したらいいのよ!」
「え?そうなの?なんか申し訳ないなぁ。」(ちょっと鼻の下をのばす)
「そうだよ。しかも、伯父さんが一生懸命働いて貯めたお金だから、誰にも気兼ねすることないのよ。伯父さん、自分で申し込み用紙に署名する?それとも、入居するのはやっぱりイヤかな?」
「もう、ここまで話がすすんだら、入居するしか無いじゃないのよー。申込書は、あなたが書いて!」
「わかったよ。弁護士さんにもそう伝えとく!」
入居させるために嘘ついてその気にさせたのではなく、私は本当にそう思っているから、分かってくれてよかったと思ってる。
厄介払いではなく、伯母が認知症になってから、ずっと寂しかったようだから、悔いなく残りの人生を生きて欲しいという気持ち。
だから伯父たちが入居して、イヤだと言うなら他の施設を探すし、見つからなければ、どこかのアパートを借りて一緒に住むつもり。
もちろん、これからも関わっていく。
だから、最後に大事なことを聞いた。
「それから、伯父さん…。あのね…。今年の初めの話し合いでは、田舎の施設に行く予定だったでしょう?だから、私は全然考えてなかったんだけど…
私の近くのホームに入居するなら、私が伯父さんの最後を看取ることになるんだ。
でさ、分からないんだけど… 伯父さんには、なんてお経あげればいいのー!?(爆)
おばあちゃんは法華教だったけど、おじいちゃんや田舎の伯母さんの何人かはキリスト教じゃない?伯父さんは何教?」
「えー?(笑) そうだな…今まで縁がなかったからなぁ。でも、何妙法蓮華経って、おばあちゃんが言ってるのしか頭にないよ。そうか、私自身は無宗教というほど縁がなかったからなぁ。何かと聞かれたら 何妙法蓮華経だよ。
そうか… 本当に世話になるね。こんなことになるなんて思ってもみなかった。」
「うん。わかったよ。ちゃんと聞いたから、任せておいて。」
以前、転居することになったら、誰かに知らせる必要があるか聞いたら、「ううん。誰もいない。友人や知人はみな先に逝ってしまった。私が一番長生き。」と言っていた。
なかなか聞きにくいことだけど、大切なことだから、伯父の気持ちを聞けて良かった。
どうしたらいいのか分かったし、私も改めて覚悟ができました。