復興へ向けて | ロンドンで働く会計士のブログ

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昔、DJ & バンドマンだった会計士の日記

震災被害状況については、あちらこちらで論じられているので、The Economistの記事を参考に復興について書いてみたい。

現在を語るとき、どうしても感情論が勝ってしまうが、未来を語るとき、ロジカルに戦略的に考えなければならない。東北地方の復興とはとりもなおさず地方経済の復活である。地方経済復活は、地域に運転資金の勢い良い流れ、流入資本の有効活用、雇用の創出、人々の活気を意味する。ここに日本という国家がどのように主導ないしは後押しできるかがカギとなる。

今回の震災において炙り出されたのはリーダシップの欠如であったと思う。原発問題にしても海外との外交についても、なかなかディレクションを指し示すことのできないリーダーの不在は海外でも多く報じられており、今後も尾を引く見通しだ。ただしここでは仮に日本の政治がリーダシップを発揮できたらと仮定して論じてみたい。

東北の経済をいち早く復興するには、まず経済特区を作ることが必要かと思う。この特区では法人税を徹底的に下げること。5%とかちゃちな数字ではなく、10%とか、へたをすれば極論かもしれないが、来る3年は法人税ゼロ、とか極端な設定でもありかと思う。そのほか消費税や住民税など「P&L」型の税は、ことごとく落とす。落ちた税収は復興後と「B/S」型ともいえる、キャピタルゲイン税などを強化することによって「繰り延べ」させればいいと思う。

また特区では、さまざまな実験的試みも行うこともできる。規制緩和はその最たる例。政治はリーダーシップで大きなディレクションを取った後は、民間にデリゲーションしてしまう。民間の力は強い。民間をもっと信用し、思い切った自由貿易圏を形成してしまうことは、リスクは伴うものの、成功すれば東北地方全体の深い自信につながると同時に、日本全体に展開できる。

そして日本全体の復興ムードを演出することと風評被害根絶のために大きなキャンペーンを打つこと。前回の記事でも触れたが、自粛は美徳ではあるが現実的には復興の足枷となってしまう。冒頭を引き合いに出すと、現在を語るには必要な感情かもしれないが、未来の創造への助けとはならない。それならば、同じ被災地の人々を気遣う気持ちを自粛ではなく、国を挙げた「復興」というスローガンの下、大いに消費活動を行うという形で表したほうが、プラスに転じるのではなかろうか。

日本の各種サイトを閲覧しているが、原発の問題にしても、エネルギー問題にしても、そして外交問題にしても、現在を軸にした感情論という遠心力に振れた意見が多い一方、中長期的視野に立った計画的議論が活発されているように感じないのは海外に住んでいるからだろうか。現在進行形で問題が膨らむ中、そんなこと言ってる場合か、とお叱りの言葉も聞こえてきそうだが、現在の問題を解決するには長期的視野から見下ろした論点も盛り込むことによって、大胆な解決案が浮上するというものではなかろうか。また「現在」を解決した後に来るのは「未来」である。そのときになってから考えていては、永遠に「現在」ばかり見ている近視眼的思想から抜け出せないであろう。