Mさんの日記で
「心に余裕がある日は電車に美人が乗っている」
という文章に感銘を受け
自覚しないまでも最近のわたしは
あんまり心に余裕がないんじゃないかと疑いの念が生まれた。

地下鉄の中は決して好きではない。
ずっと前に、地下鉄の中の「におい」に関して日記を書いたが
最近はもっぱら「音」が気になってしょうがない。

混んでいる地下鉄の中で背中越しに聴こえる
ガムを思いっきりクチャクチャ噛んでいる、音。

何のリズムだか知らないけど
なんとなくかかとを「カタ、カタ」と
貧乏ゆすりとも違う微妙なテンポで鳴らしている、音。

雨が降っている日に
傘の先でなんとなく床を「ゴン、ゴン」と小突く、音。

大体において、無意識に、無表情で
こういう音を発しているのはおじさんだ。
おじさんの頭の中にはどんなリズムが生きているのだろう。
規則的な貧乏ゆすりと違う
どこか地球の揺らぎともつかない不思議なビート。

キライだ、という気持ちで書き始めたはずなのに
結構、興味深い。

以前にインタビューする機会をもらった
Money Markが言ってた。

この世界に存在する音のすべてが僕にとっては音楽だと。
そして、彼はそっけない会議室の天井を指差して
ほら、このエアコンの音、メロディーが聴こえるでしょう?
と微笑み、そして指で微かにデスクを叩いて
エアコンの奏でるメロディーとジャムセッションを始めた。
それはだいぶイカれた行為だとそのときは思ったけど
今日の帰りの地下鉄の中にはだいぶそれに近い音が流れていた。