庭師のおじいさんが相当な歳になったため、そのおじいさんの孫息子であるクリスが後を引き継ぎました。クリスはローザと同じ16歳です。時々、手伝いにお屋敷に来ていましたから、皆に素直に受け入れられました。
クリスはいい意味でも悪い意味でも人をからかうことが上手でした。
ある日、
「ジル~、あそこの箱をとりたいのよ」
とお姫様が言いました。ずいぶんと高いところにある箱です。
「物置にいって踏み台をとってまいります」
そう言ってジルは一階に下りていきました。ジルを見送ったあと、ケイトは勇気をふりしぼって
「あの……」
と呟きました。
「ん? なあにケイト?」
「その一階の物置に蟻んこが出ても、もうローザを怒らないであげてほしいんです」
「ローザって?」
「一階の物置の掃除係です」
「ああ、そうだったわね」
お姫様はうなずきました。
「蟻んこ、仕方ないです。そうお思いになりませんか? あの物置は古いのですし――」
「駄目よ。掃除係なんだから」
お姫様はぴしゃりとケイトの言葉をはねのけるように言いました。ケイトはうな垂れました。
「じゃ、じゃあおひい様……、次に蟻んこで大騒ぎになったときには、わたしを呼んでください。ローザと二人で協力して退治しますから」
ふてくされた様子でお姫様はケイトを見遣ったあと、
「ま、まあ、そのくらい許してあげないこともないわよ」
と言いました。
踏み台を持ったジルが帰ってきました。驚いたことに、ローザも一緒です。
「ローザ!」
ケイトは親友のところに駆け寄りました。
「蟻んこかしら?」
お姫様の問いに、ジルは苦笑交じりにうなずきました。
「ケイト。あなたも行ってきて退治して頂戴」
「は、はいっ」
ケイトは急いで返事をしました。
ケイトとローザが蟻んこを退治している最中、窓を開けっ放しにしていたので、中をみた、庭の手入れをしていたクリスが近づいてきました。
「二人してどうしたの?」
「蟻んこを潰しているのです……」
ケイトはそう答えましたが、ローザは口をつむったままでした。よほど悔しかったのでしょう。
「僕も手伝おうか?」
「いいの?」
ようやくローザは顔をあげました。
「うん。君たちのひきずっているスカートに蟻がたかるといけないからね。スカートのところにいる蟻を僕は退治するよ」
「あっちいって」
氷のようなローザの声におびえることもなく、クリスは靴を脱いで庭の道具は外に置いて、物置に入ってきました。
「ローザ」
クリスはそう言って、ローザの髪の毛を手に取り口づけしました。
「な、なにするの」
怒ったローザでしたが、
「元気だしてね」
クリスの次の言葉には小さく、うん、とうなすきました。
夕方までにはだいたいの蟻んこを退治できました。
ローザに優しいクリスの言動は、ケイトを暖かな気持ちにさせてくれました。
クリスはいい意味でも悪い意味でも人をからかうことが上手でした。
ある日、
「ジル~、あそこの箱をとりたいのよ」
とお姫様が言いました。ずいぶんと高いところにある箱です。
「物置にいって踏み台をとってまいります」
そう言ってジルは一階に下りていきました。ジルを見送ったあと、ケイトは勇気をふりしぼって
「あの……」
と呟きました。
「ん? なあにケイト?」
「その一階の物置に蟻んこが出ても、もうローザを怒らないであげてほしいんです」
「ローザって?」
「一階の物置の掃除係です」
「ああ、そうだったわね」
お姫様はうなずきました。
「蟻んこ、仕方ないです。そうお思いになりませんか? あの物置は古いのですし――」
「駄目よ。掃除係なんだから」
お姫様はぴしゃりとケイトの言葉をはねのけるように言いました。ケイトはうな垂れました。
「じゃ、じゃあおひい様……、次に蟻んこで大騒ぎになったときには、わたしを呼んでください。ローザと二人で協力して退治しますから」
ふてくされた様子でお姫様はケイトを見遣ったあと、
「ま、まあ、そのくらい許してあげないこともないわよ」
と言いました。
踏み台を持ったジルが帰ってきました。驚いたことに、ローザも一緒です。
「ローザ!」
ケイトは親友のところに駆け寄りました。
「蟻んこかしら?」
お姫様の問いに、ジルは苦笑交じりにうなずきました。
「ケイト。あなたも行ってきて退治して頂戴」
「は、はいっ」
ケイトは急いで返事をしました。
ケイトとローザが蟻んこを退治している最中、窓を開けっ放しにしていたので、中をみた、庭の手入れをしていたクリスが近づいてきました。
「二人してどうしたの?」
「蟻んこを潰しているのです……」
ケイトはそう答えましたが、ローザは口をつむったままでした。よほど悔しかったのでしょう。
「僕も手伝おうか?」
「いいの?」
ようやくローザは顔をあげました。
「うん。君たちのひきずっているスカートに蟻がたかるといけないからね。スカートのところにいる蟻を僕は退治するよ」
「あっちいって」
氷のようなローザの声におびえることもなく、クリスは靴を脱いで庭の道具は外に置いて、物置に入ってきました。
「ローザ」
クリスはそう言って、ローザの髪の毛を手に取り口づけしました。
「な、なにするの」
怒ったローザでしたが、
「元気だしてね」
クリスの次の言葉には小さく、うん、とうなすきました。
夕方までにはだいたいの蟻んこを退治できました。
ローザに優しいクリスの言動は、ケイトを暖かな気持ちにさせてくれました。