シェイクスピアの『ソネット集』(柴田稔彦編)から、好きな歌の抜粋です。

※1~126のソネットにおける愛の対象は青年(BLです)
 127~のソネットでは女性(The Dark Lady)


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君がぼくの中に見るのは、あの季節、
寒風にうちふるえる木の枝にあるかなきかの
黄ばんだ枯葉がしがみつき、少し前まで
かわいい小鳥が歌っていた聖歌隊席も裸の廃墟と成り果てたあの
 季節。*
君がぼくの中に見るのは、西の空に沈む
日のなごりの黄昏どき、その光もやがて、
すべてを安息のうちに封じこめる
死の分身である黒い夜がうばってしまう。
君がぼくの中に見るのは、青春の灰の上に
わずかに残って燃える燠火の明かり、
焔を生み出したものの灰燼に押しつぶされ、
死の床でいのち尽きようとする運命だ。
  これらのことを君は感じ取り、ますます愛を強めていく、
  まもなく失うものだから、いっそう愛してくれるのだ。

* ヘンリー八世の時代に英国国教会が成立し、カトリック系の修道院が解体された歴史が背景にある