中原の虹 (1) (講談社文庫)/浅田 次郎

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読了まで随分時間が掛かってしまった。

途中何度放り投げようと思ったことか。


中国古典のいわゆる伝記ものは、

その人物の一代記からほぼそれることなく編まれていく。


この作品は、数多の群像全てが主人公であり、

あざなえる縄のごとく章を構成している。

時としてそれが全編を分かりやすくもするし、

勢いを削ぐこともある。

自分にとって、それはどちらかといえば苦痛だった。


しかし、中原の虹4巻ではそれまでの拡散続けてきた

人物史が一気に邂逅を見せる。

壮大な歴史の中でそれぞれが運命を背負い精一杯生きている。

運命に拘っても逆らっても、どちらが良いも悪いも無い。

作品に登場直後に張作リンに撃たれるいわば端役までもが

血の通った歴史の構成人として瑞々しく描かれている。

西大后をはじめとする主役達と

その端役の命の意味、重みはなんら変わらない。


とてつもない小説だった。

本書は【蒼穹の昴】の完全なる後編である。

全8巻の大河歴史小説として捉えられるべきであろう。


この小説に因む北京ツアーが人気だったとか・・・。

この小説を読む読まないで北京の旅の価値が

大きく変わるだろうな。

北京の胡同で子供時代の春児に

紫禁城では太后、文秀に会えそうだし、

奉天では白虎張が、

『何しに来やがった!この東洋鬼が!』

と迎えてくれそうだ。