「だいじょうぶだよ、車掌なんか。どうどうと吸ってればいいんだ。」

そう言ってオガハンは 通り過ぎようとする車掌にタバコの煙を

わざとらしく吹きかけた。

そのことで車掌はキレた。

「こそこそする位ならかわいいものを…」としこたま油を絞られた。

だが学校には通報されず、降車予定駅で降ろしてくれた。

「ほら、大丈夫だったべ?」

「全然大丈夫じゃないべ?オガハン!」

それ以来、タバコはやめることはなかったけど、さすがに車掌が来れば消した。

一事が万事そんな調子の秀才だった。

中学校を一番で卒業した彼は、高校でも破格の成績だった。

国立一期大学進学は楽勝だと誰もが思っていた。

ただ、舐めてた。

ちょっと本気を出せばすべてに手が届くというワナに秀才は陥った。

殆ど勉強もしないでパチンコ店に入り浸る日々。

僕も一緒だったけど目標はずっと低かったのでなんとか大学には進学できた。

オガハンがこんなはずではないと気付いた時には手遅れだった。

三浪の末、役場に勤めることになった。

それでも落ち込むことなく・・・遊んでた(笑)

そんな秀才に町役場の上司が敵うわけがない。

最後に会った時、まだ40歳代にも関わらずオガハンは町史編纂室にいた。

そんな彼が死んだ。

死因は壮絶だった。

通夜でオガハンの自宅に行った。

だいぶ時間がたっているのにちゃんと到着できた。

オガハンの部屋を見上げてみた。


机の引き出しにはセブンスターと灰皿。

壁にはスージークワトロのポスター。

「違う!そうじゃない!」

タバコを吹かしながら数学を教えてくれた中学生のオガハン。

同級生にも関わらずニックネームについた敬称に

彼の存在の大きさが現われている。


ご冥福をお祈りします。