黒が絡み付き、魂を貪り尽くす
汚らわしい
やはり悪い奴は悪いにしか進めない
近寄ルな
消エロ
神ト吐カス俗世ノ死臭ニ塗レタ殺人物体メ
『死神(シニガミ)』
その一つである孔雀・迷路亞(クジャク・メイロア)
青々と天を駆け抜ける大空、鼓動を絶え間無く動かすあらゆる俗世体。
地上よりも天に少しばかり近い、血の通わない無生の人工柱に留まる小鳥はせわしなくその上を動き回っている。
その姿をもっと暗い樹海が見つめる。
何も言わず、表情を作ることもなく、だ。
何かを待つかのように。
ドクンドクン
鼓動の音と刻む針の音
ドクンドクンドクン
成長し死に近づく記録と、カウントダウン
ド ク ン
「か弱き燭(ともしび)、終止符を打たせていただく。我が鎌の餌食と成りて終焉を迎えよ。」
血の通わぬ白に近い唇から紡がれる言葉に闇が反応する。
辺りに存在するありとあらゆる物の陰が少年の掌に絡み付く。それはやがて黒の長い柄を造り、先端には黒く歪んだ光る三日月状の大鎌が青の中生まれた。
貪り、尽くす
その存在の全てを
眼光の残り灯が揺らめき空に描かれる。 人間の「瞬き」の時間しか経っていない。
だが、少年の姿は既に鎌を振り切った後のようで先ほど居た場所から50mは離れている。
ゆっくりと少年の黒髪が風に靡く。
「俗物。
—死亡確認、法命捕獲。」
鎌に刺さる魂に巻き付き始める漆黒の触手が、逃げることのできない檻へと姿を変える。
魂を捕まえた後は引き渡すだけ。
誰に、誰にでもない。
決して『死神』とは触れ合わない全て。
漆黒のランプに収まる命の光を暫し見つめる。
またか…
少年は表情を変えることなく息を吐き、先を見透かし力を抜いた。
ガッッ
ポタッ ポタッ
「きったねぇ死神め!!早く出ていけ!!」
「姿を見せるな!!」
青い液体が額から滑り落ち、顎から地上に向かい落下する。
不自然な程の冷たい青、空の爽快さはなく窮屈で鈍よりとした色が傷口から溢れ出る。
人間に置き換えれば皮膚を破り流れでる赤い血だ。そう体を巡る血。
何かを投げつけられ額に怪我を負ったのだ。
罵声が延々と続くが、孔雀の体が負に反応することはなく、その場を去っていく。
何を言っても分かりあえぬ存在だ。
ワシは死神だから。
命を奪う神、殺める神、死を与える神、それが死神。
呼吸をし大地に生を受けたものに終止符をうつ、それは命の流れの一つである。
世の中に広まる『死神』の存在が蔑まれようと、流れを乱すことは出来ない。
始まりから終わりまで、死神は見守らねばならない。
人間という弱い生き物のすべてを。
「そろそろ狩るか、この人間。」
病室から覗く大きな木の枝の上には黒衣を纏う少年。
黒の袖から白く血の通わぬ色が連なり姿形を象る。
胴体から伸びる四肢、首、頭部。
五体満足の人間と変わらぬ容貌、だが異常なまでの白い肌と重力を感じさせない雰囲気は人間ではない。
酷似して異なる生物。
「か弱き燭(ともしび)、終止符を打たせていただく。我が鎌の餌食と成りて終焉を迎えよ。」
暗緑の命が宿る二つの眼球が僅かな燭を捕らえる。
逃げも出来ない虚ろな目は精一杯現世に縋ろうと、強く強く生を掴もうとする。
俗世の者には見抜けない小さな叫びが、冷たい色から形成される耳を貫く。
常に聞こえてきた魂の吠吼、それを鎖すように鈍き残酷の刃が麗らかな陽射しを浴び姿を見せる。
叫びを掻き消す殺人鬼、いや殺人の神の手に握られた巨大な鎌が陽射しを遮り
闇を呼び
「俗名、小林睦子。」
魂をえぐり出す
鎌に刺さる魂はドクドクと鼓動と同じ速さで脈打ち、赤い揺らめきを靡かせている。
少年の手から伸びる大鎌。大鎌の刃に刺さり暴れる赤い亡きたての命。
少年は振り下ろした体制からゆっくりと立ち上がり鎌に揺らめく赤を冷たく射抜く。
「死亡確認、法命捕獲。」
小さく紡がれた言葉を合図に鎌の漆黒に輝く柄から同じく漆黒の絲が螺旋を描きながら何本も産み出されていく。
長さも太さも様々なそれらは赤を飲み込み、硬く冷たい格子となり、光を閉じ込めるランプと化した。
孔雀・迷路亞(クジャク・メイロア)。
神様の中で死を司り忌み嫌われる尊き存在の一人。
『死神』


