命を奪う神、殺める神、死を与える神、それが死神。
呼吸をし大地に生を受けたものに終止符をうつ、それは命の流れの一つである。
世の中に広まる『死神』の存在が蔑まれようと、流れを乱すことは出来ない。
始まりから終わりまで、死神は見守らねばならない。
人間という弱い生き物のすべてを。
「そろそろ狩るか、この人間。」
病室から覗く大きな木の枝の上には黒衣を纏う少年。
黒の袖から白く血の通わぬ色が連なり姿形を象る。
胴体から伸びる四肢、首、頭部。
五体満足の人間と変わらぬ容貌、だが異常なまでの白い肌と重力を感じさせない雰囲気は人間ではない。
酷似して異なる生物。
「か弱き燭(ともしび)、終止符を打たせていただく。我が鎌の餌食と成りて終焉を迎えよ。」
暗緑の命が宿る二つの眼球が僅かな燭を捕らえる。
逃げも出来ない虚ろな目は精一杯現世に縋ろうと、強く強く生を掴もうとする。
俗世の者には見抜けない小さな叫びが、冷たい色から形成される耳を貫く。
常に聞こえてきた魂の吠吼、それを鎖すように鈍き残酷の刃が麗らかな陽射しを浴び姿を見せる。
叫びを掻き消す殺人鬼、いや殺人の神の手に握られた巨大な鎌が陽射しを遮り
闇を呼び
「俗名、小林睦子。」
魂をえぐり出す
鎌に刺さる魂はドクドクと鼓動と同じ速さで脈打ち、赤い揺らめきを靡かせている。
少年の手から伸びる大鎌。大鎌の刃に刺さり暴れる赤い亡きたての命。
少年は振り下ろした体制からゆっくりと立ち上がり鎌に揺らめく赤を冷たく射抜く。
「死亡確認、法命捕獲。」
小さく紡がれた言葉を合図に鎌の漆黒に輝く柄から同じく漆黒の絲が螺旋を描きながら何本も産み出されていく。
長さも太さも様々なそれらは赤を飲み込み、硬く冷たい格子となり、光を閉じ込めるランプと化した。
孔雀・迷路亞(クジャク・メイロア)。
神様の中で死を司り忌み嫌われる尊き存在の一人。
『死神』
