トルストイの『戦争と平和』の再読、完遂できるかどうか不安に思いながら読んでいたが、もう後半のクライマックスに入ることが出来たから安心している。

後半の1812年戦争では、トルストイの歴史観がよく示されている。

「皇帝は歴史の奴隷である。」

この見方がトルストイの歴史観を象徴しているのではないかと思える。

ほとんどの人間は、自分たちの自由意思で物事(歴史)を動かしている、と思い込んでいる。

しかし、それは違うのだ。

個人のいかなる行動も、歴史という巨大な意志に逆らっているものは1つもない。

あらゆる偶発的な個人の意志が、1つの歴史的必然のもとに集まっていき、それが巨大な歴史を生み出していく。

こうした歴史観を私たちは素直に受け入れる気にはなれない。

なぜなら、私たちは歴史的必然というものに身を委ねて、自分自身の自由を喪失していることを望まないからであり、認めたくもないからである。

私たちが歴史の構成物に過ぎないなどということを理解するのは容易なことではないのだ。

しかし、私たちはトルストイの『戦争と平和』を読んでいると、こうした歴史の見方がごく当然のように思われてくるだけではなく、いささかの躊躇もなく、その歴史観を受け入れられるような気にさせられてしまう。

『戦争と平和』に出てくる多くの個性的な人物たちは、何一つ不自由を感じてはいない。

ピエール、アンドレイ、ナターシャ、ロストフ、彼らは心の底から自由を謳歌しているのである。

そうした自由に生きる個人から1812年戦争という巨大な必然が生み出されていく様子が、私たちにトルストイの歴史観を納得させるのである。


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