9週で
不妊クリニック卒業をした翌日
お昼に妹と外食していた。
食べ終わった頃に
ずるんと何かが膣から出た感覚があった。
急いでトイレに行って確認すると
3cmくらいの大きな血の塊が
パンツについていた。
これは何だろう…
残っていた血腫が
綺麗に出てきてくれたのか?
もしかして赤ちゃん…?
パニックになりそうになりながらも
塊をポケットティッシュの袋に包んで
カバンにしまった。
妹に病院に行った方がいいと言われ
急遽クリニックへ予約を入れた。
一旦帰宅し、夫と妹を心配させまいと
多分大丈夫だよと落ち着かせた。
クリニックへ行き
診察台にあがりエコーをしてもらう。
すぐ終わらない。
暗い雰囲気。
素人目でエコー画面を見ても
心臓の動きが見えないような気もした。
待合室に戻り、夫と妹に
「ダメそうな感じがする」と連絡し
夫がクリニックに
迎えに来てくれることになった。
番号が呼ばれて
夫と一緒に診察室へ入った。
担当医ではない
おじいさん院長先生から告げられたのは
「赤ちゃん、死んじゃったねぇ」
………
なんて言い方をするんだろう。
少しは覚悟していたものの
悲しみと怒りが沸いてくる。
夫が私を心配そうに見つめている。
心拍は一度止まると
再び動き出すことはないと説明された。
待ち時間に必死に検索していたので
「出血でエコーが見えづらかったとかは
ないんでしょうか?」
と聞いたがそれはないらしい。
子宮にまだ赤ちゃんがいたため
排出された塊は血腫だった。
「赤ちゃんがこうなったことを
血腫でお母さんに知らせてくれたのかもね」
はぁ。
妊娠維持のために飲んでいた2種類の薬は
もう飲まなくていいと言われた。
納得できていない私を見て
「数日様子を見たかったら
1種類は飲み続けてもいい」
と言われた。
もう1種類は近々流産手術をするときに
大量出血のリスクになるから
飲まないようにとのことだった。
両方とも妊娠維持のために必要な薬なのに
1種類だけ飲むことで気休めにさせる
意味が分からなかった。
先生は流産判断をしていたが
全然納得できなかった。
前日に心拍が見えるエコー動画を
楽しく観ていたところから急展開となり
体調の変化もない夫の方が
状況を受け入れることが
難しかったかもしれない。
それでも冷静に
セカンドオピニオンをもらおうか?と
別の病院を探して予約を取ってくれた。
初めて入る町の小さな産婦人科は
妊婦さんが数人待っていた。
小規模だからすぐに名前が呼ばれ
先生と話をした。
不妊治療や流産歴、今の状況を説明し
セカンドオピニオンが欲しくて
来ましたと言った。
結果が変わらないのに"諦めの悪いやつ"と
思われそうで不安だったが
先生はちゃんと話を聞いてくれて
「分かった。じゃあ診てみよう」と
優しく言ってくれた。
診察の結果は
「やっぱり心拍は確認できない」
ということだった。
…2人の医師がそう判断するなら
受け入れるしかないか。
「治療もがんばったのに残念だったね。
助けになれなくてごめんね。」
先生は悲しそうに眉をハの字に曲げて
心からの言葉をかけてくれた。
初対面なのに
私の気持ちに寄り添おうとしてくれた。
事実を冷徹に伝えるだけじゃなくて
感情を大切にしてくれた。
有り難くて有り難くて
凍った心が溶けていく感覚だった。
病院を出て夫と落ち合い
どんな診察だったか
どんな先生だったか
話しながら涙が溢れた。
夫は心配したが
こんなときに変だけど
これは嬉しい涙だと伝えた。
体外受精で授かった赤ちゃん。
9週で心拍が止まってしまった。
幸せが一気に消えてしまった。
不育症の薬を飲んでいたのに
なぜ?
どんな治療をすれば
もうこんな思いしなくていい?
まず流産処置どうしよう?
流産の事実を受け止められた後は
疑問や不安が押し寄せてきた。
