豪腕健在なり 小沢一郎が語る (下) サンデー毎日 | 『私にも夢がある!』一兵卒の呟き

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剛腕健在なり

「安保法廃止」「社会保障改革」「原発ゼロ」…野党連合は包括的改革案を提起せよ





 民進党代表選を控えて、細野豪志氏が離党した。揺らぐ安倍政権と流動化する野党勢力、加えて中国と北朝鮮は常に暴発の危険を抱える。野党連合の要であり、独自の政局勘を持つ小沢一郎氏(75)が、転換期の日本と世界を語った。野党の政権奪還はいかにして可能なのか―。

 小沢一郎氏へのインタビューを続けたい。

前号では、安倍晋三政権の命運とポスト安倍について聞いた。今回は、政界再編の行方と国際情勢について論じてもらう。
野党といえば、民進党がどうなるか。蓮舫氏の代表辞任を受け、9月1日が後継代表選だ。この間、細野豪志氏が単独離党した。若手、中堅にはまだまだ離党予備軍がいるという。この野党第1党のバラバラ感の中、果たして野党連合はどこに向かっていくのか。

 まずはポスト蓮舫だ。前原誠司、枝野幸男両氏のガチンコ対決となっている。

「どなたでもいいが、やはり野党を結集して力を合わせて政権交代を実現しようという人であってほしい。希望です。そうしないと野党はみな野垂れ死ぬ」

 共産党とも一緒にできる人?

「一緒といっても選挙協力はね。その許容範囲は持ってないとダメだ」

 2人についてはそれぞれどんな印象か?

「個人的にそんなに付き合いはない。どちらかというと、前原君は僕のことを批判していた。枝野君もそうだ。両方とも批判サイドにいた」

 保守色の強い前原氏、リベラル系の枝野氏?

「確かに、前原君は外交安保政策では、ライト(右)のイメージ。離党した長島(昭久)君もそうだ。だからといって、それが党内リベラル系の人たちの考えと大きな差になるとは思えない。つまり、彼らも日米関係だけでいいとは言わない。今まで日米関係に軸足を置いてきただけのことであって、朝鮮半島も中国も考えなければいけないと言う。これもまた政治家としては当たり前の話だ」

「前原君であっても、共産党と選挙協力はできると思う。京都(2区選出)だから蜷川虎三府知事(7期28年間続いた共産党軸の革新府政)以来の対立があるだろうが、恩讐(おんしゅう)を越えないと天下は取れない。僕だって過去のことを言っていたらやっていられない。事実、前原君は野党は協力しなければ、と言い始めている」

 枝野氏は? 代表選の党員、サポーター部門では組合系から票を取るのでは?

「だけど、今の連合を見るとちょっとひどすぎる。あれでは組合員は執行部を信用しなくなる」

 例の残業代ゼロ法案をいったん容認しながら、傘下組合の反対で撤回に追い込まれたケースだ。どうしてああなった?

「やはり経営側の力が強いのか。だけど、ちょっとお粗末だ」

 あなたが、自民1党支配を倒して細川護熙連立政権を作った時、連合はその中軸部隊だった。今は民進党離れが止まらない。何がどう変わったのか?

「安倍1強もあるが、現行組織の既得権を守ろうという意識が強くなっているのではないか。それが経営者側に利用される」

 ただ、これからの野党共闘も連合とは一緒にやっていくことになる?

「もちろん。別に敵にする必要はない。だが、その連合が今回みたいなことをやって、果たして組合員全員に号令が掛けられるのかという問題は残るだろう」

 連合内でも電力総連は原発容認であり、スタンスが違う。

「電力総連が(脱原発に)反対すると言うが、たいしたことない。電力といっても経営者は会社経営ができればいい。政府が、安いクリーンエネルギーと言って原発を推奨してきたから、それに乗ってやってきただけで、原発にこだわることもない。脱原発・新エネルギー開発という方向が定まれば、かなりの資本投下を政府が先頭になってやる。そうなれば、会社経営も十分にできる。電力総連幹部が忖度(そんたく)して反対と言っているだけのことではないか」

まずは「10・22」の衆院補選に圧勝する

 民進党代表選。政策論争として何を望むか?

「一つは、その原発政策だ。リーダーにならんとすれば、はっきり言わなければダメだ。蓮舫執行部時代のように半端(「2030年原発ゼロ」方針を「30年代ゼロ」に後退)では話にならない。外交・安保政策については、安倍政権で成立させた安保関連法の違憲性を指摘し廃止すること。財政経済では、社会保障だ。年金、医療、介護制度改革の方向性を骨太に示せばいい」

 その財源は?

「要は、お金が先か、実際の制度の実現が先かということだ。お金がないから理想の制度ができませんということでは社会保障制度改革はできない。この際、赤字国債依存でもいいから、年金、医療、介護を含めたトータルなシステムをキチンと作りあげることだ」

「具体的には、次の衆院選挙に向けて、その包括的な改革案を提起、政権交代ができればその4年間で制度をちゃんと作り上げて施行する。ただ、この制度を維持するにはこれだけのお金がかかります。それがいいと思うのであれば国民の皆さん、ぜひこれだけ負担してください、と。

 次の選挙はその負担を争点にし、そこで国民の了解が得られれば、その制度を恒久化できる。先に国民に制度のメリットを体験してもらう、二段構えが必要ではないか。民主、自民、公明3党の12年の税と社会保障の一体改革は、国民へのメリットがわかりにくかった。あれでは国民は納得しない」

 19年10月に消費増税10%という政府方針がある。安倍さんが2度も先送りしたものだ。これはどうする?

「今10%にしたら、景気がダメになる。消費税は必要な税制だとは思っているが、日本経済の現状を踏まえ、社会保障制度を完成させることがまず先だ。事実を見てもらい、国民に判断を仰ぐことだ。納得できる制度を作るには時間も金もかかる。かかるが、僕はまだあと4年は日本の財政は大丈夫だと思う。その後の収入さえちゃんと見通しできればではあるがね」

 どちらにせよ、9月に民進党の新体制ができる。何を望む?

「政権を取らないと政策は実行できない。次の衆院選で勝つこと。それには野党の完全共闘が必要だ。それは10月22日の衆院補選から始まる。ここで圧勝しなければならない。それができるかどうかは民進党次第だ。一応は皆でやろうという程度ではダメだ。どこまで本気なのか。国民がそれをどう評価するか」

「野党共闘がきちんとできれば知事選でも参院選でも勝てる。最初が岩手知事選(15年8月20日)、新潟の参院選(16年7月10日)と知事選(同10月16日)。あれで野党共闘のはずみができた」

共産党との関係、そして「小池新党」

 10月補選で野党共闘が取ると?

「野党がまとまっていたら勝つ。そうなると、安倍さんは辞めると思うが、その次は誰が立っても任期満了近い選挙になるだろう。そこまで解散は打てない」

 そうなると補選から本選挙まで1年ある。

「その間に国民の支持を得られれば、十分野党連合が勝てる。その時のリーダーが骨太の政策を示して選挙に臨む」

 その時は民進党代表がリーダー?

「常識的には民進党だろう」

 野党共闘とは、民進党、自由党、社民党……。そして共産党?

「共産党は中には入らない。アウトサイダーではないが、選挙の協力政党だ」

 共産党は政権交代後の連立内閣には入らないのか?

「入らない。彼らも入りたがらないのでは。選挙協力の枠組みでは一緒にやろうということになっている」

 その時は「オリーブの木」方式(1995年、イタリアで12の中道・左派政党が緩やかな連合体を組み、総選挙で右派政権に勝利)か?

「これは次善の策。最善の策は各政党が解散して新党を作ることだ」

 なかなかすぐには?

「いやいや。これも民進党次第だ。民進党の代表が、皆で一からやろう、出直そうということになれば容易にできる」

 また、民主党の名前に戻すとか?

「民進党という看板では自公に代わる受け皿にはならない」

 自由党にするわけにもいかない。

「何でもいい。小池(百合子都知事)さんだって、都民ファーストの会という聞いたことのない名前をつけてあそこまで勝った」

 小池さんの国政新党はできるか?

「国政進出する気はあるのではないか。ただ、現段階では、所属国会議員もいないし、政党もないから言いようがない」

「それとね、これは都議選前から言っていることだが、小池さんは選挙には圧勝する。ただ、圧勝後、小池さんは思案投げ首ではないか。今後どうするか。安倍1強が続くという前提で彼女はいたと思うが、それがなくなった。それに加え、豊洲も築地もなかなか結論が出ない。ズルズルいったらメッキがはげてしまう」

 といって、そこから逃げるわけにはいかない。

「いかない。そうすると、彼女はどういうスタンスで国政に臨むのか。知事でずっといるというのも選択肢の一つだが、国政への色気もある」

 だが、次の衆院選に本人自身は間に合わない。2020年の東京五輪まで知事を辞めるわけにはいかない。

「間に合わせる必要はない。本人が出られなくても国政新党の代表にはなれる。次の衆院選では誰か別の人物を首相候補として担ぎ、そのまた次の総選挙の時に本人が国政に出てくればいい。それは十分可能だ」

 知事と国政新党代表を兼務できるか?

「彼女の決断次第だ。橋下(徹前大阪市長)君だって(維新の党代表兼務)やった」

「ただ、それは野党がまとまって一つの集団を作れた時の話だ。そうでないと、話し合いができない。それができて初めて(小池氏に)あなたはどうするのか、という話になる」

 国際政治については?

「流動化のマグマがたまっている。一つは米国だ。トランプ大統領は、政治家というよりビジネスマンだ。彼の理念、世界観が全く見えてこない。社長の言うことは何でも正しいと思っているから、とっとこ周辺のクビをすげ替える。民間会社ならいいが、政治の場でやると今のようにごちゃごちゃになる。米国にそういう政治的流動化はあるが、本質的なマグマは極東だ」

「中国、朝鮮半島だ。中近東どころではない。中国が流動化したら世界の動乱につながる。僕は最初から言っている。共産党独裁と市場経済は相反する。絶対に矛盾が表面化すると。いまは習近平氏の権力が盤石に見えるがそんなことはない」

 なぜそれがわかるのか?

「なぜあれほど民主運動家や自分の仲間を弾圧するのか。権力基盤が安定していないからだ。本人が清廉潔白ならいいけど、同じ事やっている。そういう意味で僕は危ないと見ている」

 そうなると、南シナ海、東シナ海はどうなるか?

「それ以上に、中国の共産党権力に陰りが出ると、北朝鮮が危ない」

安倍さんには解散する力はない

 暴発してしまうと?

「中国の抑えがきかなくなった時が危ない。中国が自分のことに一生懸命になって、北朝鮮どころではなくなる。今だって、米国が何を言おうと、北の9割以上は中国貿易だ」

 日本はどう対峙(たいじ)する?

「安倍流でやると、軍事力の強化になるが、意味はない。難しいことではあるが、本質的な解決法は、米英と組んで中国民主化のソフトランディングを実現することだ。政治体制を共産党1党独裁から複数政党制にしていくことだ。小さいといえども、台湾だって李登輝氏は国民党単独政権からそれをやった。同じような形でできたらベストだ」

 確かにそれができたらベストだが、すぐにはできない。当面はどうする?

「政治で解決することだ。軍事では解決できない。戦争になるだけだ。習近平氏や共産党とちゃんと話のできる政権にならないと。中国も内実は大変だから話し合いには絶対に応じる。ただ、日本は約束したことは必ず守ることだ」

 最後にもう一回念押しとして、年内の衆院の解散・総選挙の可能性について問うてみた。しばし考えた上での小沢氏の答えは、以下のようなものだった。

「安倍さんが早めに倒れれば、あるかもしれない。安倍さんにはもう解散をする力はない。自民党内だってみんな反対だ。新しい人に変われば、野党の態勢が整わないうちにということになる。そうすると(10月22日の)補選も一緒になる。その可能性はある」

 永田町はお盆休みを迎え、静まり返っている。安倍改造内閣も始動してはみたものの、まだその評価は定まっていない。与野党ともに衆院議員は、地元に帰り有権者の声を聞き、選挙区の草取りに余念がない。

 ただ、9月からは与野党ともに勝負所だ。安倍氏がどう動くか。小沢氏の予言が当たるのか。一寸先は闇。あらゆる可能性を排除できない政局になってきた。