安保法案に対する国民の反対がこれだけ高まっている中で、安倍政権は参院でも法案を強行裁決した。
こんな暴挙は絶対に許されないことは言うまでもない。ただ、野党の側にも反省すべき点はあったと思う。
野党(民主、維新、共産、社民、生活無所属の会)は党首会談を開き、『あらゆる手段を使って抵抗する』ということで一致した。しかし、重要なのは『あらゆる手段』とは何かということ。この点、僕は考え方が違った。他党は、問責決議や委員長の解任動議など法的に認められる当たり前の手段は使うものの、委員会室の封鎖や投票で牛歩をするなど、物理的手段を使ってまで抵抗するつもりはないということのようだった。
ただ、今回のこの安保法案は、国の将来と国民の命と暮らしを危険にさらすものであり、だからこそ過半数の国民が反対している。したがって、野党が多少手荒な抵抗をしたとしても国民の多くは理解するだろう。我々野党は、安保法案を絶対に廃案にしなければならないと繰り返し主張してきた。だが、結局、法案を潰すことより、品位ある国会運営の方が大事だという結果を作ってしまった。
しめくくり総括質疑の前の委員会で、一部野党が一応物理的抵抗を見せたが、もっと前から、パフォーマンスではない本気の決意で、成立阻止に臨むべきだったのではないか。そもそも中央公聴会を15日に設定させてしまったことが問題だった。公聴会の日程を引き延ばすべく、あの段階でもっと徹底に抵抗すべきだった。
国民についても同様なことが言える。もっともっと安倍政権に怒りを爆発させてもよかったようにも思う。昨年末の総選挙の際、自民党は安保法制について、マニフェストの一番最後の方に少し書いた程度で、ほとんど触れなかった。それなのに法案成立を強行するのは、明確な公約違反だ。
もちろん連日、国会前に大勢の人が集まり、怒りを表明した。16日に横浜で開かれた地方公聴会では、国会に戻る委員の行く手を阻もうとした人たちが警官ともみ合いになるほど抵抗をした。よくやったと思う。ただ、同時刻に、国会周辺にも人が集まっていたようだが、横浜の方に勢力を結集できれば、もっと盛り上がったことだろう。
国民の多くは法案に反対だと思う。しかし現実に行動を起こさなければ、法案は通ってしまう。デモは国民が主張をアピールする手段として正当に認められている行為だ。何もせず、あとになって、酷い目にあって後悔する。それでは間に合わない。反対だけど仕方ない、そういうところが日本人にはある。
今後は、成立してしまったから仕方がないと、安保法案という悪法を運命として受け入れるのか。それが嫌ならば、次の参院選や総選挙で、国民はしっかり意思表示をしなければならない。
09年と14年の総選挙を比較すると、実に2000万人もの人が投票を棄権していた。棄権した有権者は大いに反省すべきだ。
【我々の責任で自民に代わる受け皿をつくる】
あの時、野党はばらばらで、自民党に代わる受け皿がなかったということは事実だけれど、それでも2000万人がどこでもいいから野党に投票していれば、自民党は今より議席は少なかったはずだ。
民主主義では選挙が最も重要だ。
主権者が権利を行使できるのは選挙の時しかない。選挙を軽視してはいけない。棄権行為が一番いけない。
もちろ我々野党の責任は大きいので、次の選挙に向けて、なんとかひとつの受け皿をつくりたいと思っている。その際には、棄権した2000万人だけでなく、3000万人、4000万人という人たちが投票に必ず行くという気持ちを持ってもらいたい!
そうすれば、この悪法を変えることができる。それしか方法はない。
日刊ゲンダイ 毎週金曜日掲載