安倍首相は最近ご機嫌なのだそうだ…
時事通信 田崎史郎氏 日本海新聞記事より
「安全保障関連法案を審議する舞台が参院に移って以降、安倍首相の機嫌が非常にいい。イライラすることがなくなった」ー。
側近は、最近の安倍の様子をこう解説する。内閣支持率低下によって、安倍は不振にあえいでいるようにみられるが、実態は違う。
*首相が機嫌が良い理由
参院平和安全法制特別委員会における審議は先月28日に開始されて以来、空転することなく、順調に進んでいる。審議時間は今月5日現在、38時間41分に達した。衆院で特別委員長・浜田靖一が再三「速記を止めてください」と発言し、何度も審議が中断したのに比べると雲泥の差だ。
参院審議に当たり、自民党は用意周到に作戦を立てた。まず、特別委員長に鴻池を据えた。鴻池は、参院民主党のドンと言われる副議長・輿石東や、特別委筆頭理事・北沢俊美と仲が良く、蓮舫らとも定期的に食事をしている。自民党が民主党に「委員長になると一番やりづらい相手は誰か」探りを入れたところ、鴻池だった。
衆院での審議時間の配分は与党1、野党9だった。しかし、参院では与党4、野党6とした。また審議時間の算定方式も、参院予算委員会で慣例化している「片道方式」ではなく、「往復方式」とした。
片道方式は、質疑者の質問時間に政府の答弁時間を含まない。これに対し、往復方式は答弁時間を含むため、首相ら答弁者が長々と答えると、その分、質疑者の時間が減ることになる。
最も効果を上げているのが『サンドイッチ作戦』だ。与党の質問時間を確保したため、質問は自民、民主、公明、維新、共産、元気、次世代、無所属ク、社民、生活、新党改革の順で行なわれる。
まず、自民党が安倍の話したいことを質問する。そこで安倍は気分よくなる。バレーボールに例えると、自民議員がトスを上げ、安倍がスパイクを打ち込む形だ。
次に民主党の質問で疑問が生じたら、政府側は公明の質問者にメモを入れて質問させる。共産党や社民党が厳しく追及しても、最後は安倍の盟友の新党改革代表・荒井が締めている。
@中国にも言及
こうした工夫をした結果、衆院のように安倍がボコボコにされることはなくなった。安倍は「自民党の佐藤正久さんの質問はなかなかいい。もっと質問させて欲しい」などと語っている。
安倍は佐藤の質問に答える形で「中国の軍事力は広範かつ急速に強化している。国際社会の懸念事項だ」などと語り、中国を名指しするようになった。衆院の段階では、中国を刺激することを恐れ、「ある国」などという表現にとどめてきた。これが奏功して首相官邸には「法案の狙いがわかった」などという反応が寄せられているという。
このまま順調に進めば、参院での審議時間は今月中に80時間を超え、衆院の116時間30分の約7割になる。参院の審議時間の目安は衆院の7~8割と言われる。
安倍が安保法案というトンネルを抜ける日が刻一刻と近づいてきたようだ。
(敬称略)
日本海新聞8月10日 掲載より