
安保関連法案を巡る今週の焦点は、維新の党が政府への対案を出し、8日に国会に提出したことだ。
集団的自衛権を行使する要件となる政府案の『存立危機事態』に対抗する概念として、『武力攻撃危機事態』を新設した。
これについて維新は、橋下徹最高顧問も、松野頼久代表も、柿沢幹事長も、『少なくとも7月いっぱいは審議してもらわないと『十分な審議』とは言えない。そうでなければ採決を拒否する』と言っている。まさにこの通りならば、政府は大変な苦境に陥ることになる。維新が最後までこの方針を堅持すれば、安倍首相は窮地に追い込まれる。
政府与党は、法案を15日に委員会で、16日に衆議院本会議で採決したいとしている。
『衆院再可決の60日ルールを適応するための限界は、29日の衆議院本会議の採決で間に合う。いま28日採決がささやかれているが、これはまったくのごまかしである。』
しかし、政府与党としては、数日の余裕をもって採決すると思う。
遅くとも、24日には強行するのではないか。
なぜなら野党がその気になれば、不信任案を連発することで、最大7泊8日の日数がかかるからだ。
いずれにせよ28日採決なら60日ルールの適応がなくなるという、誤魔化しに引っ掛かってはならない。
安保法案に対する国民の疑問はどんどん大きくなり、審議をすればするほど、『おかしい』という声が広がるんじゃないか。
そうしたら、とてもじゃないけど参議院で審議なんてやりきれない。
途中にお盆を挟むし、全野党が共闘する岩手県知事選もある。
そう考えると、安倍さんはなにがなんでも24日めどで採決するだろう。
強行採決になったとき、公明党はついていくのか。
いざとなれば自民党単独で過半数あるから通せるが、そこまでしたら安倍内閣はもたないだろう。
だから、とにかく維新がいま主張している方針を最後まで貫くかどうかが重要になってくる。
それによって安倍政権党の命運も決まる。
過半数の国民が安保法案に反対しているのだから、是非維新は、全野党共闘で、国民の期待に応えなくてはならないと思う。それが廃案にする唯一の方法だろう。
野党の足並みが乱れたら、戦は勝てない。
振り返れば、09年の政権交代に向けての民主党の戦いも徹底的にやった。
あの時は民主党がほぼ一党であったけれど、
消えた年金問題やガソリン税の暫定税率廃止など、国民生活に直接響く問題だったから、徹底抗戦が国民に受け入れられた。
今度の法案は、いますぐ国民生活に影響する話ではないけれど、みんな将来に空恐ろしい不安感を持ち始めている。
こうした国民的背景があれば、野党が
『採決に応じない』
という強硬策を取っても、国民に理解されると思う。
採決に応じないといつのは、審議拒否じゃない。もっと議論しろという話だ。
特に憲法9条との整合性という大事な問題は、まったく議論が深まっていない。
『政府はもっときちんと説明しろ。それをしないで採決はおかしい』
という野党の主張は、国民に受け入れられると思う。
安保法案に対する国民の不安の声がこのままどんどんと高まり、野党が揃って共闘できれば、廃案は本当に現実的になってくる。
日刊ゲンダイ 金曜日連載より