フリースクールを運営していると、生徒の様々な成長を見つけることができます。今回は、つい先日見つけた、ある生徒(仮名:山本君16歳)の成長ぶりをご紹介します。
その成長とは、会話の量です。ほかの生徒や、私との会話量が6か月前に比べて2倍に増えました。「会話なんか誰でもするじゃん」と思うかもしれません。しかし、ここで比べるのは、6か月前の彼と、今の彼です。
6か月前の彼は、話しかけても返事が返ってきませんでした。フリースクールで私が「やってみたいことはある?」ときいても、「・・・」と目を伏せていました。
しかし、4月になって、彼がフリースクールにやってきたとき、変わっていました。会話の量が2倍になっていたのです。
他の生徒からの質問に答えるだけではなく、自分から話しかけることもできるようになっていました。
例えば、ある生徒が映画を観ているとき、隣に座り、「その映画、観たことある」と言っていました。また、公園で散歩する際には「あの二人がいない、どこ行った?」とほかの生徒を気遣う発言をしていました。
また、驚いたことに、人生初のアルバイトに挑戦するため、某ファミレスに面接に行ったことを教えてくれました。「まあ、落ちたんですけどね」と山本君は言っていましたが、面接に行っただけでもすごい成長です。
6か月前は、他人に対して心を閉ざしていた山本君が、どうして今、会話ができるようになったのか?それは、居場所があったからです。居場所とは、「自分はここにいてもいい」と思える場所です。
居場所があると、人は心を開きます。心を開いたかどうかは、会話の量で分かります。あなただって、見ず知らずの人とは会話しませんが、親友となら何分でも話せますよね。それは、あなたが親友に対して心を開いているからです。
私は、フリースクールの役目を、生徒の居場所だと思っています。だから、生徒の居場所づくりのために、ある行動をします。それは、1日2回、フリースクールで生徒を褒めるということです。
例えば、山本君がアルバイトの面接について話してくれた時、こう褒めました。
山本君「アルバイトの面接に行ったけど落ちたんですよ。」
私「アルバイトの面接、受けたんだ?すごいね!」
面接に受かったかどうかという結果を褒めるのではなく、受けたという事実を褒めます。こうすることで、山本君にとってフリースクールは、居場所になります。
なぜなら、フリースクールに行くと、何かにチャレンジしただけで褒められるからです。結果を出そうと出すまいと、1日2回は褒められるのです。だから、「自分はここにいていい」と思えるようになります。
その結果、山本君は、会話の量が2倍になりました。つまり、周囲の人に心を開くようになったということです。さらに、その日の帰り際、山本君は驚きの提案をしてくれました。
「来週から、ここを週2回で利用したいんですけど」。現在は週1回でフリースクールに通っていますが、週2回に増やしたい、ということです。それだけ、彼にとって、フリースクールが居心地のいい居場所になったということですね。
現在、全国の中高生が、家庭で自粛中です。中には、息の詰まる思いをしている子どももいるでしょう。そんな時は、親御さんが子どもの「居場所」を作ってあげるといいでしょう。
家庭を「居場所」にするためには、1日2回、子どもを褒めます。そうすると、時間が経てばたつほど、子どもは親御さんに心を開いてくれます。悩みを打ち明けてくれたり、将来の夢について話してくれるようになります。