卒業・入学式で国旗国歌を排除するための闘争マニュアルを配布した
まず、北海道日高地区のとある学校に入った「ファクシミリ送信票」を見ていただきたい=写真。これは日高地区の
支部から2月1日に中学の分会長に送信された連絡で、表題に「当面のとりくみ・今後の予定などについて
(指示・連絡)」とある。時間は14時前後。勤務時間に堂々とこうした組合文書を学校同士で取り交わしているのだ。
これは地方公務員法第35条の「職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び
職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ
従事しなければならない」と定めた職務専念義務違反に抵触する恐れが多分にあることはいうまでもない。
次に連絡内容の冒頭に「先週は連日のFAX連続攻撃をかけてしまい、申し訳ありませんでした!と謝罪した
舌の根も乾かないうちに、またまたFAX…です」と記されている。こういうおちゃらけた組合文書が学校で常態化
してやりとりされていることをうかがわせる内容だ。
そして「『時間外勤務縮減の取組状況』調査への取り組みについて」と続く。文面から分かるのはこの地区で
教委が学校での教師の時間外勤務について調査をしており、校長が自校の状況を教委にどう回答しているのかを
提出期限となる締め切り前に校長に確認するよう呼びかけているのだ。
北海道の学校では道教委や教育局、市町村教委の一挙手一投足が組合に監視されている。そしてことあるごとに
組合が干渉・介入してくる。とりわけ勤務条件に関係の深い「時間外勤務」をめぐるテーマになると、学校の状況を
校長が外部にどう報告をするのか-といった内容にまで口を挟んでくるというわけで、もし自分たちに不利な内容が
報告されていたりすると、どうなるのだろう。目に浮かぶのは大騒ぎになって、校長は責められる光景である。
報告内容も当たり障りのない内容に差し替えられたり、調査がゆがめられる恐れすらあるのではないか。
話が少しそれるが、平成17年、北海道滝川市の小学校でいじめ自殺が起きたさい、学校や教育委員会の対応が
批判を浴びたのを覚えているだろうか。教委や学校長が対応を誤り、積極的な原因究明に取り組まなかった-と
して処分を受けた。確かに学校も教育委員会も対応はひどかった。
北海道ではいじめの事件を契機に道教委がいじめの実態の調査を実施しようとしたら、北教組が敏感に反応。
調査に協力しないよう指導していた。教委や校長が批判を浴びて窮地に立たされる場面では批判する側に立つが、
いざ学校の舞台裏をつまびらかにさせられそうな場面になると、たちまち、教組は「教委の調査は教育現場の管理強化を
ねらったもので反対だ」などと調査の不当性を言い出す始末なのだ。
話を戻す。日高の文書にはしばしば「校長交渉」という文字が登場する。これは行政が国(文科省)-道教委-教育局
-市町村教委-学校というたての構造を持っているのに対して、組合もまた、日教組-北教組-支部-分会(各学校単位)
という縦構造で対峙(たいじ)して、それぞれで組合と当局側の交渉のテーブルを持っている。「校長交渉」というのは
学校における学校長と、組合代表者の間でなされる「交渉」を指し、これが学校運営を歪める元凶になっている。
北教組のいっている「校長交渉」という北海道では日常的な光景自体が地公法違反の恐れが極めて高い代物なのである。
「校長交渉」だけではない。集団で大挙して組合員が押しかけ、教育委員会幹部を取り囲み、執拗な質問攻めや
揚げ足取りを繰り返したり、やじや怒号が飛び交う糾弾集会のような「交渉」が北海道(に限らないが)には残って
いるが、これも地公法に照らせば違反濃厚であることは明らかである。
日高地区では今春の小中学校の卒業式・入学式での国歌・国旗の適切な取り扱いをさせない「『日の丸君が代』
強制に反対するとりくみについて」と題した“闘争マニュアル”も出回っている。
文書にはこうある。
「日の丸・君が代はともに9割以上の分会で強行されたものの、全道各地では(1)日の丸・君が代を正面添付させなかった
(2)事前説明をさせるなど、子ども・保護者の内心の自由を保障させた(3)起立や清祥などの実態調査や着席に対する
名前の連呼など地教委や校長による不当な動きに対して撤回・阻止させた-といった学校が北海道で2割に達したと述べている。
そして分会には「マニュアル」では「教師の学習を深め、たたかう意思統一をはかる」と呼びかけ、学習の観点を次のように示す。
(1)日の丸・君が代強制が憲法が保障する主権在民、思想及び良心の自由を侵害していること
(2)侵略戦争のシンボルであり、日本人をはじめアジアや世界の人々はそれを忘れていないこと
(3)今日においても日本経済の海外進出の拡大、政治大国、軍事大国のシンボルとなっていること
(4)天皇を中心とした国家主義的な日本人としての自覚をもたせる役割を担わせていること
(5)日の丸・君が代の強制を通して改悪学習指導要領を全国すべての学校に徹底させること
(6)文科省が天皇制のもと、侵略戦争や植民地支配の歴史を隠蔽し、国際化の美名のもとハイテク時代の日本人の
海外進出拡大のため、「国際競争に勝ち抜く大国日本人の自覚」を求める人づくりを目指すものであること
このように国旗国歌に反対する視点を並べ、学校からの完全排除を提唱。校長交渉の強化に加えて「式次第に国旗掲揚や
国歌斉唱を入れさせない」「式場への掲揚でなく、校舎屋上ポールへの掲揚にとどめる」「式典掲揚なら壇上正面での
掲揚は避け、三脚を使って目立たせないようにする」など綿密な妨害工作を促している。
ちなみに民主党は「学習指導要領の大綱化」を政策に掲げている。学習指導要領は学校教育法施行規則の一部で、
法規としての役割をもち、法的拘束力を備えている。この法的拘束力をそぐのが大綱化であって、学校現場の教師の
判断で勝手に授業内容を決められるということであり、日教組のカリキュラムの自主編成運動に沿ったものだ。
国旗国歌の指導も骨抜きにされる可能性が高い。(安藤慶太・社会部専門職)(以上、抜粋。本文はかなりの長文です)