虹の橋のふもとの館にキウリの馬とナスビの牛が現れた。

馬の聖獣はマタタビの木のソリを背負い、
それは猫たちが好む安心する匂いがした。
牛の聖獣は力持ち。後から馬を追いかけ、
帰りのソリをここへと引き戻る。

1年に一度…かくり世からうつし世へ帰るお盆…再会する人間を想い、猫の霊魂たちは早く早く! と胸が高鳴り心が踊る。

虹の館の猫支配人は待合室にいる猫たちに、ソリに乗る順を案内していく。みな、わくわくしながら瞳を輝かせていた。

「え?何ですか?あちらへ戻ったら僕きたよー」と暴れたい?まぁそれであなたのご家族が喜ぶならいいですけど…ただあなたは霊魂となった今もデカいのですから、器物損壊・家屋損傷 厳禁ですよ」

「え?何です?帰省期間を延長します?…あのね、カラオケボックスじゃないんだから、お盆ツアーの期間は守らなければなりません。時間延伸・期間延長 厳禁ですよ。かわいいふりしてもダメダメ~~」

「え?今度は何?人間に特別なお土産を持っていきたい?そうですか。あなたは優しい子ですね。そしてとても愛された…
いいですか?あなたたち自体が素晴らしいギフトなのです。鳩胸を張って帰るのです。猫なんですけど鳩胸でププ

」

「あなたたちはお盆期間中ぐうたらして、特別な力を宿します。でもってそろそろ帰るという時に、その特別な力を人間にお戻しすることができるのです。
人の体に活力を与え、心を潤し、明日への希望を導く力です✨それがこのツアーの、最大の目的なのです」
星の数ほどいる猫たちは喜んで、次々に大きなソリへと乗り込んでゆく。

最後の子が乗り込むと「ではお願いしますね」と支配人がキウリの馬へ声をかける。
美しい聖獣は静かに虹の橋をさかのぼり、優しく少しずつスピードをあげていく。

きっとみな、生きていた頃と同じく大好きな人の元で楽しく過ごすでしょう…支配人の顔に笑みがこぼれた。
そして、牛の聖獣が支配人に頭を下げてゆったりと馬の後を追うのだった。
いつも本当にありがとう。力持ちのあなたで良かった。あの子たちは!もれなく!!めっちゃ太って戻ってきますから!
「愛猫たちのお盆ツアー・イキの巻」(未刊)