なんだい?あの猫は…
”帯”とは違うねぇ…
火鉢を取っちゃって…
え?女将さんがまた…
居つかせたのかい?
どれ、美人さんや…
全く女将さんにも…
呆れるよ…
え?脚が悪いって?
まあ、器量良しなのに…
可哀そうに…
ま、ずっとここにいなよ…
あたしは、紅葉…
ここじゃそう名乗ってんのよ…
あんたもさ…
綺麗な橙色だねぇ…
一体どこをどうして…
ここに来たのか…
苦労してきたんだね…
ゆっくりおし。
え?火鉢の場所を?
いいのいいの。
あの子に譲るわ…
だって猫だからさ…
いいねぇ猫ってのは。
あたしは今度生まれる時は…
猫がいいわさ~
「花魁の愛した猫~其の弐:紅葉の章~」(未刊)
シリーズ前作は
おまけ
歴史的史実を見ると
花街や遊郭には猫を大事にする風潮があったらしく
江戸百万人時分には、遊女と猫の浮世絵も数多く描かれました。
私が見た事があるのは、母猫に寄り添う仔猫が弐匹…
弐匹とも同じ青色の紐と鈴をつけてて、
その紐は着物か帯か、普通にそこに身近にあるような紐でした。
当時裁縫は日常茶飯事で、ちょっとした御余りの紐や布の切れハシが出たら何かと取っておいて何かと使ったのでしょう。
その猫の親子の首輪の紐も、
そんな印象のものでした。

そういう時代に、思いを馳せると…

…不妊や去勢手術もできないあの頃の方が
身寄りのない猫やその猫が産んだ子供を大事にしていた気がします。
決して猫が好きではない人でもなんだかんだ言いながら
近所で面倒を見てたような気もします。

その末裔である私たちと、今ここにいる猫たちの祖先がかつてそういった関係であるならば…
今一度、おうちのない猫のこととか、無垢な小さな命の存在を改めて考えたいと思います。
暖を取る猫の瞳に、何か学ばねばならぬ悟らねばならぬものを感じる今日この頃です