あるところに ねこがいました。
ねこにはおやきょうだいがなく
ものごころついたら ここにいました。
このマンションのにんげんが たべものをくれました。
おなじしきちの べつのにんげんが おやつもくれました。
いくつかダンボールがあるので そこでねました。
まわりには にたようなねこが なんびきもいました。
あかちゃんをやどしたねこも。
くさむらのなかのはこで からだをやすめていました。
よくわくらないままここでうまれて
ねこがきらいなにんげんに はこをこわされたり
おいかけまわされたり
ひなたぼっこちゅうにばせいをあびせられたり
うとうとしていたらけりとばされたり…
あるときからにんげんたちが いるねこと いらないねこを えらんだために…
えらばれたねこは にんげんとともに あんぜんなおうちで のんびりとくらし…
えらばれなかったねこは ながくはいきられないのでした…
と…。
ワタクシのスライドはここまでです。
そしてですね…
人間が選ばなかった猫、それがあなたたちです。
あなたたちはこれから、あなたたちのエリアへ行きなさい。
人と関わらない場所で、ここにいる皆を家族として暮らすんですよ。
さ!レインボーブリッジの ウエストサイド便が 今夜出ますからね
そこにある底なしリュックに、食べ物やトライしたいおもちゃを詰めるんですよ。
え?なに?思い出した?
優しくされた記憶がある。
ただ一人、お礼を言いたい人間がいると?
…そうですか。
では、イーストサイドにいって その人間のそばで暮らしますか?
…
…ハイハイわかりました。
その船は明日の夜に出ますから、今夜はこの、虹のふもとの館に泊まりなさい。
良かったですね、思い出せて…
ワタクシは…うらやましいですよ
「ときのはざまにいるねこたち」(未刊)