BOOKデータベースより
「「ママがね、ボケちゃったみたいなんだよ」妹からの電話で実家の状況を知った智代。
かつて横暴だった父が、母の面倒をみているという。
関わり薄くいられたのも、お互いの健康あればこそだった。
長男長女、墓守、責任という言葉に距離を置いてきた日々。
妹は二世帯同居を考えているようだ。
親孝行に名を借りた無意識の打算はないか。
家族という単位と役割を、北海道を舞台に問いかける傑作長編。
親の終活、二世帯同居、老老介護──。
大人の諦観と慈愛に満ちた傑作長編。
「どうやったらこんな一行が書けるんだろう」と唸る文章が、随所に、あくまでさりげなく配される。
文字通りの「文芸」。
小説の素晴らしさとはこういうことかと、励まされ、胸が熱くなった。──村山由佳
第15回中央公論文芸賞受賞作」
桜木さんの「ラブレス」を読んだ時と同じくらい、衝撃を受けました。
特に、私も、親の介護とか、自分自身の行く末などを、考えざるえない年齢だからこそかもしれません。
連作短編のような形で、各短編で登場人物のそれぞれの視点から描かれていくのですが
そのどれもが秀逸です。
どうやって、この作品を終わらせるのだろうと、やや不安になりながら読み進めますが
母サトミの姉登美子の章が、また素晴らしい。私は80代にはまだ間がありますが、80代で生きる登美子さんのような女性だったら、こう感じるのではないか、というところの描き方がよくて、完璧です。
直木賞を受賞されたころの、桜木さんの作品は、正直あまり得意ではなかったのですが、
「ラブレス」「家族じまい」と、圧倒される作品が多くて、私が感じ取れなかっただけかな~と思ったものの
文庫の解説にも、桜木紫乃は「化けた」と書かれていて、同じように感じる方もおられるみたです。
あらためて、小説って凄いなと思います。村山由香さんの言葉に共感します。