我が国は人口減少局面にあることに加え、総人口に占める高齢者の割合は増加しており、他国も経験したことのない超高齢化社会を迎えようとしている。

 こうしたなか、全国平均に比べて早い時期から高齢化が進行している過疎地域では、今後の地域社会の維持・継続が困難になる事態が多数発生すると器具されている。このような状況を踏まえ、施工計画・施工設備及び積算の技術者として、以下の問いに答えよ。

 

(1)過疎化が進行しつつある地域におけるインフラの維持管理・更新を実施するにあたって、多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策の実施に際して生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

 

■回答

1.維持管理・更新を実施するにあたっての課題

(1)いかに措置業務の担い手不足への対応するか

 維持管理・更新は点検、診断、措置、記録が重要である。これらのメンテナンスサイクルのうち、点検業務はドローン等を活用し点検診断は進みつつあるが、過疎が進む地域では、区分ⅡやⅢの施設が多くあるものの、十分に措置が進んでいない。

これは、過疎化が進む地域ではインフラの維持管理・更新における措置業務の担い手不足が特に深刻であるためである。

 そのため、ヒトの観点からインフラの維持管理・更新の措置業務の担い手不足への対応が課題である。

(2)いかに管理施設数を削減するか

 インフラ施設を国民、地域住民が使用、又は防災性を信頼して生活するため、適切な管理により健全性を維持する必要がある。

しかし、これらの施設は人口増を前提に計画され設置されているものが多い。そのため、施設数や規格が現在人口や将来人口予測を踏まえると過大である場合も多く、維持管理・更新の負荷要因となっている。

 そこで、モノの観点からインフラ施設のダウンサイジング、統廃合などにより、いかに管理施設数を削減するかが課題である。

(3)いかに財政負担軽減を図るか

 多くのインフラ施設は日常点検を踏まえた補修をメインとして維持管理を行い、経年化により施設の老朽化が機能を失って段階で全部更新する事後保全型を採用している。このため、更新時に大きな財政負担が発生する問題が生じている。

 そこで、カネの観点から予防保全型管理への転換や官民連携推進等により、いかに財政負担軽減を図るかが課題である。

2.最重要課題と解決策

(1)最重要課題

「措置業務の担い手不足への対応」が最重要課題である。なぜなら、過疎化が進む地域では超高齢化社会を迎えようとしているなど、今後、一層生産年齢人口の割合が減少し、担い手不足が深刻化するためである。

(2)解決策

 解決の方向性:人が直接作業する業務に対し、近年、開発が進んでいる最新技術を活用し省人化を図る。

解決策1:施工のオートメーション化

 措置業務において、生産性の高い無人化施工を実施する。長距離遠隔操作として、遠隔オペレータが離れた場所から建設機械を遠隔操作する。

効果として、1人のオペレータが複数現場を兼任することや、都市部のオペレータが過疎地域の施工を実施することが可能となり、多様な人材が働けることになる。

解決策2:データ連携のオートメーション化

 点検診断で3次元データを取得しているが、3次元の形状データを中心に設計業務等の活用にとどまっており、措置業務において省人化の効果を実感できていない。そこで、今後は測量・設計業務で得られた3次元モデルをICT建設機械や工場製作などで活用する。 

さらに、設計情報をAR/VRにより現場に投影し、施工のイメージを関係者全員で共有し、手戻りやミスの防止、効率的な作業の実施につなげることで担い手の負荷軽減を図る。

3.新たなリスクとその対策

(1)新たなリスク

 解決策実行により担い手はマネジメント業務の割合が高まる。

その結果、従来行ってきた建設現場でのOJTによる若手技術者への技術継承の機会が減り、将来、若手技術者の技術力が低下するリスクがある。

(2)若手技術者の技術力が低下することへの対策

 ベテラン技術者の勘やノウハウといった暗黙知を言語化や数値化、図表化など明確にした形式知に転換する。

従来のOJTと、形式知を活用した教育のOFF-JTとを体系的に組み合わせたナレッジマネジメントにより若手技術者への教育体制を確保し、技術継承を図る。

                     以上

 

■自己評価

この問題は令和2年度の問題で、過疎化が進む地域でのインフラの維持管理・更新がテーマの問題です。

令和6年度の現在の施策を想定して問題を作成されているわけではないので、ちょっとアンバランスな印象ですが、現在の施策版で回答してみました。

実際は、過疎化がかなり進む地域では5Gがまだ整備されていないので、解決策が実行できないと思いますが、全国的にみた過疎地域は一定、5Gも整備されているエリアもあるので、まったくNGというわけでもないような。