公共工事の入札・契約では、透明性の確保、競争の公正性の確保、入札談合等の不正行為の排除、ダンピング受注の防止、不法・不落対策の入札・契約の適正化が求められる。

 発注者においては、ダンピング受注を防止するための適切な低入札価格調査基準や最低制限価格の設定と、不調・不落対策等に対応するため適切な発注が求められている。

 一方、応札者は、発注者が設定する予定価格及び低入札価格調査基準等を推算し、応札している実態も指摘されている。

 このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)公共工事が適正な額で応札・落札されるための課題について、施工計画、施工設備及び積算分野の技術者として多面的な観点から3つ抽出し。それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を複数示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

 

■回答

1.適正な額で応札・落札されるための課題

(1)発注図書の精度向上

 公共工事(委託業務含む)の応札・落札は、発注者が示す発注図書等を前提に行われる。発注図書には施工現場の施工特性の明示項目がある。しかし、詳細なことは未記載が多く、契約後、予算管理に影響を及ぼす現場特性が分かることも多いため、応札者はこれらの費用を予備的に加算しておく必要がある。

 そこで、情報の観点から適正な額で応札・落札のため、いかに発注図書の精度向上を図るかが課題である。

(2)技術力評価を反映した落札者選定

 民間のノウハウを活用し、実際に必要とされる価格での応札が求められるが、実態は、応札者が発注図書の積算項目を公表歩掛や公表単価を用いて積算している。これは落札基準が価格のみで、技術力を評価される仕組みが未導入のケースが多いためである。

 そこで、選定方法の観点から総合評価方式の対象拡大等いかに技術力評価を反映して落札者を選定するかが課題である。

(3)ノウハウを発揮しやすい契約方式に転換

 公共工事は、従来、設計・施工分離発注方式を採用しているが、近年技術開発が進展し、独自のノウハウも充実している状況である。応札において、標準的な施工技術を前提とした設計では、施工段階で、独自ノウハウを活用し、施工することに支障となり、本来の必要となる経費での計上ができていない。

そこで、契約方式の観点からECI方式や設計・施工一括方式の採用など、施工者のノウハウを発揮しやすい契約方式に転換することが課題である。

2.最重要課題と解決策

(1)最重要課題

 「発注図書の精度向上」が最需要課題である。

なぜなら、透明性の確保、競争の公正性の確保などの幅広い効果が見込まれるためである。

(2)解決策

 解決の方向性:応札者が、現場条件が分からないため予備的に計上する費用を抑制することを目的に、発注図書に現場条件を明示し、適正な額で応札が可能となる発注を推進する。

解決策1:補正等の設計変更方法明示

 近年、週休2日制適用(発注者指定方式、受注者希望方式)、価格変動を考慮したスライド(全体、単品等)適用など、契約後、変更設計の対象となるのか不透明であるため、安全側となるよう予備的に経費を計上しているケースがある。

 そこで、契約後の設計変更の対象の考え方も含め、発注図書に明示し、応札者が応札額の精度を向上し、適切な額で応札できるようにする。

解決策2:自然的・社会的条件の明示

 交通規制・内容の制約、出水期、積雪・融雪期の中止基準、自然環境への配慮対策の有無などの施工制約が発注図書に明示されていないことがある。

 これらの制約は、発注前に分かっていたものであるにも関わらず、制約を踏まえた工法変更により変更設計で対応しているケースも多くある。

そこで、発注図書において、自然的・社会的条件を施工明示し、これに基づき積算した発注図書とすることで、応札段階から施工現場で必要となる経費を適切に見積もり、応札者が適正な額で応札できようにする。

3.新たなに生じるリスクと対応策

 新たなリスクは、解決策実行により予定価格の金額が従来よりも高くなり、この価格を参考にした標準工期が単年度で執行できない案件が生じる。

さらに、非出水期での施工工程を明らかにした場合も、単年度で執行できない案件が生じる。

 公共工事は、原則単年度での執行が求められるため、発注の規模小さくするなどの対応により、現場施工が非効率な分割発注となることが想定される。

 リスク対応は、(ゼロ債務や複数年国債などの)債務負担行為の積極的な活用、(標準工期によらない)柔軟な工期設定、(工期と契約期間を翌年度にまたがるよう権限を得られる翌債制度活用など)速やかな繰越手続き、(四半期発注など)積算の前倒し等を行う。これらの対応で、非効率な分割発注となることを抑制する。             以上

 

■自己評価

施工計画では、こんな問題も出るんですね。

技術屋さん向けというより、民間の営業担当さん向けじゃないでしょうか。

 

施工時期の平準化に向けた「さしすせそ」をイメージして、リスク対策は作成しました。