働き方改革関連法による改正労働基準法(平成31年4月施行)に基づき、令和6祢4月から建設業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用されることとなった。また。公共工事においては週休二日対象工事の発注が拡大している。

 建設業が引き続き、社会資本の整備・維持管理、災害対応、都市・地域開発、住宅建設、リフォーム等を支える役割を十分に果たしていくためには、建設業の働き方改革の取組を一層進めていく必要がある。

 このような状況下において、週休二日となった多工種工事を受注した。本工事の受注者(元請負人)としての立場で、以下の問いに答えよ。

(1)本工事のすべての工事従事者の週休二日を実現するため、施工計画を策定する際に検討すべき課題を、多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じる懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

 

■回答

1.施工計画を策定する際に検討すべき課題

(1)いかに生産性向上の徹底を図るか

 受注者には、工期内に工事を完成させる義務があるため、これまで時間外労働を行うことで対応してきた。

 これは、建設業の働き方が労働集約型であることが原因である。

 そこで、生産プロセスの観点から、いかに労働集約型から資本集約型に転換し、生産性向上の徹底を図るかが課題である。

(2)いかに労働安全の徹底を図るか

 建設業は、高所作業や大型建設機械を扱う危険な作業が多い現場であり、毎年労働災害によって、死亡事故を含む多くの労働災害に見舞われている。

特に、建設機械の事故、墜落・転落の事故、崩壊・倒壊の事故は3大災害とされ、事故の半数を占めている。これらの事故があると、負傷者の業務のフォローや、事故対応業務などの追加業務が発生し、週休2日の実現が難しくなる。

 そこで、労働安全の観点から、いかに労働災害防止の徹底を図るかが課題である。

(3)いかに労働時間の把握を図るか

 多工種工事では、下請企業とも役割分担して取り組むことが多く、工事従事者の人数が多いため、労務管理が容易ではない。

 これは、労務管理を人の目や書類での確認による方法を採用しているためである。

 そこで、労務管理の観点からCCUSの活用など、いかに労働時間の把握を図るかが課題である。

2.最重要課題と解決策

(1)最重要課題

 「生産性向上の徹底」が最重要課題である。

 理由は、建設業が引き続き、社会を支える役割を十分果たすことに最も貢献するためである。

(2)解決策

 解決の方向性:人手を使っていた業務について、ICTやAI等を活用し、省人化、自動化を徹底する。

解決策1:ICT施工の活用

 前工程(測量、設計)で得られた3次元設計データを用いて、ICT建設機械で現場を施工する。具体的には、半自動的に施工を行うMCやセンサーやGPSなどの装置を搭載した建設機械により人が操作するMGを活用した施工にする。

 なぜなら、これらを利用することで、施工用の丁張りが減少し、効率よく遂行できるためである。

解決策2:プレキャスト製品の活用

 工場で製作したコンクリート製品を現場で組み立てる方式に転換する。

 通常の現場打ちコンクリートでは、現場で鉄筋を組み、型枠を組んだ後に生コンクリートを打設する。打設完了後は、養生して、コンクリートが固まりきったら解放する流れであるが、この工程では多くの技能者の手間がかかるが、プレキャスト製品を活用することで、省人化が図れる。

 さらに、プレキャスト製品は、建設現場と異なり、気象条件等の制約を受けずに製作できるため、安定的に生産できる効果もある。

3.新たに生じる懸念事項とそれへの対応

(1)新たな懸念事項

 現場により求められる要求性能は異なっており、万が一、これらの確認を怠ったまま、安易に解決策を実行した場合、品質確保の不足が懸念される。

 建設業は、社会資本の整備などインフラ等の管理に携わっているため、品質確保が不十分な場合、国民の信頼、生命を失うことに繋がってしまう。

(2)懸念事項への対応策

 解決策に関連する基準の制定、基準の管理徹底、確認方法のマニュアル化を実施する。

 将来的には、これらの確認についても、AI等を活用し、省力化・自動化したうえで、漏れのないように実施できる仕組みを構築する。

 また、施工計画策定にあたっては、常に最新の技術情報を取得し、科学的な知見に基づき検討し、定める。

                    以上

■自己評価

3枚ものを3年分解いてみたのですが、毎年、生産性向上が課題でいけそうな問題が1問は出ている気がします。

気になるのは、この問題は、多工種工事という条件なので、この部分ももっと触れておくべきだったのか悩みました。

例えば、工種Aと工種Bの連携を強化するような内容や、クリティカルパスの工程を重要視するような内容を求められているような気もしましたが、そういった知見がないので、あきらめました。