地方都市の自動車専用道路に架かる模式図のようなRC桁橋(9径間、橋長200m、有効幅員10m、スラブ1m)において、縦目地を設けずに既設部と構造的に一体化して上部工拡幅部(幅6m)を設ける工事を行うことになった。既設部は将来拡幅を見込んだ設計となっている前提で、本工事の担当責任者として、以下の設問に答えよ。なお、施工時期は冬期、本線及び側道は本線規制(昼夜間)のみ可能、本工事施工箇所周辺は田畑であり、住宅、商店、地下埋設インフラ設備等はないものとする。
(1)本工事の特性を踏まえて、施工計画を立案するうえで安全管理上検討すべき事項を2つ挙げ、技術的側面からその内容を説明せよ。
(2)本工事の構造的一体化を妨げる品質管理上のリスクを1つ挙げ、PDCAサイクルにおける計画段階で考慮すべき事項、検証段階での具体的方策、及び是正段階での具体的方策についてそれぞれ述べよ。
(3)床版コンクリートを予定の半分程度打設していた段階で、コンクリート製造工場の練り混ぜ機械が故障しコンクリート打設を中止せざるを得なくなった。この対応にあたり、本工事の担当責任者として発揮すべきリーダーシップについて、複数の利害関係者を列記し、それぞれの具体的調整内容について述べよ。
■回答
1. 安全管理上検討すべき事項とその内容
(1)作業員の墜落防止
本工事は、高さ5mでの作業となる特性がある。
この特性を踏まえ、作業員の墜落防止対策を検討する。具体的には、手すり先行足場の設置、幅木の設置、新規入場者安全教育の徹底、落下防止ネットの設置、墜落防止用器具の設置、十分なスペースの作業ヤードの確保、10分間の平均風速10m以上の場合工事中断などの対策を検討する。
(2)通行規制に対する交通安全対策
本工事は、本線及び側道は本線規制(昼夜間)のみ可能である条件特性がある。
この特性を踏まえ、特に旅行速度の高く、万が一、交通事故が発生した場合、被害のリスクが大きい本線の交通安全対策を検討する。具体的には、X(旧ツイッター)など様々な媒体を活用した交通規制のアナウンス(迂回の協力依頼含む)や、交通誘導員の配置、案内看板設置、夜間は電光掲示板設置、夜間灯付きバリケードの設置などを検討する。
2.品質管理上のリスクと対策
(1)リスク
施工時期が冬期のため、コンクリートの初期凍害が懸念される。
(2)計画、検証、是正段階における具体的方策
〇計画段階:日平均温度が4℃以下となることが想定されるため、寒中コンクリートとして、計画する。
特に、温度管理基準を設定し、対応方法を定める。
材料は、早強ポルトランドセメントを用いる。
〇検証段階:予め定めた温度管理基準に基づいて、基準値内かどうかを検証する。基準値を下回る場合は、原因究明と対応方法を検討する。
〇是正段階:温度の基準値を下回った場合は、保温の徹底、水及び骨材を熱す。
なお、セメントは直接熱さないように留意する。
3.発揮すべきリーダーシップ
(1)利害関係者
発注者、コンクリート製造会社である。
(2)具体的調整方法
発注者は、当初契約どおりの工期と確実な品質確保を要求する。
コンクリート製造会社は、練り混ぜ機械復旧までの時間確保を要求する。
そこで、事実を逐一、発注者へ報告する。製造会社には、できるだけ早く故障原因と、復旧の見通しを示してもらう。技術的にどうしても復旧に時間を要す場合もあるが、復旧までの工程計画の提示を求め、提示情報は発注者へ報告する。
十分な練り上げができず、品質が確保できない場合は、最終的に道路利用者の安全を確保できなくなるため、予算や工期の制約を品質確保より優先したりは絶対しない。公益確保を最優先する。
■自己評価
設問1は、結構いい感じにかけました。
設問2は、初期凍害は、温度が低くなったら温めるくらいしかないので、検証段階と改善段階が書きにくかったです。
縦目地がないという特性を踏まえたリスクを挙げておくべきでした。そうすると、改善内容にしっかりチッピングを行ってコンクリートを打つ。といった流れにもっていけたと思います。
設問3は、リーダーシップの一般論でまとめてしまいましたが、もっと練り混ぜ機械の具体の話を盛り込んだ方がよかったです。
キーワードは、手すり先行足場、幅木、新規入場者安全教育、落下防止ネット、墜落防止用器具、作業ヤード、平均風速10m以上、交通規制のアナウンス(迂回の協力依頼含む)、交通誘導員の配置、案内看板設置、夜間は電光掲示板設置、夜間灯付きバリケード、寒中コンクリート、温度管理、早強ポルトランドセメント、保温、水、骨材、セメント などでしょうか。