地方都市郊外の丘陵地を(粘土混じり砂質土:25万m3)盛土(20万m3、最大高さ10m)して大規模宅地造成工事を行うことになった。このうち鉄道に近接する範囲の一部分には補強土壁(最大高さ6m、延長約200m)が計画されている。

以上を踏まえて、本工事の現場責任者として、以下の内容について記述せよ。

(1)補強盛土部の、施工計画を立案するに当たって検討すべき事項のうち、本工事の特性を踏まえて重要なものを3つ挙げ、その内容について説明せよ。

(2)本工事の品質低下の原因となる重要なリスクを一つ挙げ、現場責任者として、どのようにマネジメントするか、留意点を含めて述べよ。

(3)補強土壁の最上部を施工中、豪雨により一部の補強土壁に異常な変形が発生した。

この対応にあたり、現場責任者として発揮すべきリーダーシップについて述べよ。

 

▪️回答

1.補強盛土部の施工計画立案時の検討事項

(1)墜落・転落の安全管理方法

本工事には補強土壁部の最大高さ6mという特性がある。この特性を踏まえ、墜落・転落防止などを目的に安全管理方法を検討すべきである。

具体の検討内容は施工幅が狭い中、施工機械との接触を回避しようとする人力作業員が盛土部から転落することを手すり等の設置など転落防止対策を施すよう検討する。

(2)盛土の品質管理方法

本工事には補強土壁部は盛土20万m3、最大高さ10mの一部で、その上部に市道新設や造成宅地という特性がある。この特性を踏まえ、盛土の沈下防止を目的に品質管理方法を検討すべきである。

具体の検討内容は締固め密度や含水比測定により、転圧回数、転圧方法を定め、沈下防止対策を検討する。

(3)鉄道運行の支障回避方法

本工事には補強土壁の敷地境界側に鉄道が近接して存在という特性がある。この特性を踏まえ、鉄道運行の支障回避方法を検討すべきである。

具体の検討内容は施工時間帯、鉄道会社による見張り方法、事前協議、非常時対応行動の検討などを検討する。

2. マネジメント

(1) 品質低下の原因となるリスク

集中豪雨等による雨水の盛土への浸透がリスクである。

(2) マネジメント(留意点含む)

大規模な施工となり、施工期間は長期にわたるため、一定、効率を重視して、全体の状況把握を行うべきである。例えば、個々のポイントを多くの作業員でそれぞれ確認するのではなく、ドローンで異常個所がないか、確認して気になる箇所のみを重点的に詳細調査する。

留意点としては、気象情報の把握や土質試験値の把握、悪天候時は事前にブルーシートで盛土部を覆う対策等基本的な対策は、必ず抜かりがでないようにする。これらの品質管理方法を施工計画に位置付け、関係者で共有し、徹底する。

3.リーダーシップ

宅地造成を早期に完成してほしい要求と、鉄道運行に支障が絶対でないよう安全管理を高める要求が相反する。

これらの要求対して、施工工程の中で、安全管理上重要なところには効率化よりも安全管理を優先し、安全対策を強化する。安全管理上重要性が低い工程については許容できる範囲で確認頻度を下げることにより、効率化を優先し、両者の利害調整を行う。

なお、人命最優先であるため、これらを脅かす品質低下は絶対にしない。