河川表流水を水源とし、急速ろ過方式を採用する浄水場において、いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれる局地的大雨の影響により、年に数回の頻度で原水が極めて高濁度となる事象が発生しており、対策の検討が求められている。あなたが、この検討業務を担当責任者として進めるに当たり、以下の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 

■回答

1.調査、検討すべき事項とその内容

①水源(上流域を含む)

 上流域における降水量等の気象情報、河川の水位、水質、(ダムがある場合は放流操作状況)等を調査し、高濁度原水の発生状況との関係性を検討する。

②浄水施設の施設状況

 施設の建設年度、容量、機能、仕様等を調査し、2段凝集に必要な施設、原水調整池、貯水池等の追加整備の可能なスペースの有無等を調査し、追加整備の必要性や濁度除去率の妥当性等を検討する。

③浄水施設の運転管理

 過去の高濁度原水発生時の凝集剤の種類、注入率、アルカリ剤の注入率、ジャーテストの実施状況及び実施結果を運転管理日報等から調査し、ろ過濁度への影響を検討する。ピークカットの実施状況を調査するとともに、その実施基準が定めていない場合は、基準を検討し、マニュアルにも反映することを検討する。

④処理水質

 ろ過水濁度を0.1度以下に維持できているか否かを調査し、クリプトスポリジウム等の対策の観点からろ過の後段に紫外線処理設備の導入の検討を行う。

2.業務を進める手順

(1)業務手順

①事前調査、②対策立案及び実施、③効果の確認

(2)事前調査の留意点と工夫点

 他事業体の取組事例を調査するとともに、当該事業体との連携体制を確保できるよう工夫する。

 また、現地調査も必要である。

(3)対策立案及び実施の工夫点及び留意点

 ハード対策には莫大な費用が必要となるため、運転管理の強化などソフト対策との両面から総合的な判断により効果的かつ効率的な対策を検討するよう工夫する。ハード対策を立案する場合、費用の積算、実施時期の設定、施工上の課題を整理するよう留意する。

(4)効果の確認の工夫点と留意点

 対策実施後は、必ず効果を調査し、事前調査結果と比較分析し、効果の数値化ができるよう工夫する。

 期待した効果が得られなかった場合は、追加の対策を検討する必要があることに留意が必要である。

3.関係者との調整方策

 業務を効率的、効果的に進めるため、河川管理者、学識経験者、他の水道事業者(同一河川から取水する)、需要者で構成する協議会を設置することが有効である。

協議会を通じて、以下のことが可能となるため。

①河川管理者に、河川の水位、水質の情報提供依頼

②学識経験者に、科学的知見に基づく助言を得ること。

③他の水道事業者に、類似の事例への対応状況の照会。

④需要者に、計画段階から取組説明、状況説明を行うことで、ニーズの把握や、合意形成の迅速化。

 

■技術士会の評価

選択Ⅱー1と合わせてA

 

■自己評価

結構よいと思います。

理由は、調査検討事項が、問題文で記載されているフレーズから素直に挙げられているためです。

反省点は、設問(3)が協議会を設置することで終わっていて、リーダーシップを発揮する内容になっていないことです。

対策にはコストがかかるので、優先順位を付けた対策に絞って実施するなどの関係者調整を記載した方がよかったです。