近年、社会・経済情勢の変化や国民の価値観、ニーズの多様化に対応するため、高速道路のサービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)(以下「SA/PA」という。)は単に休憩するだけの機能ではなく、多機能化が進んでいる。今後、高速道路が社会的ニーズの変化に対応した進化・改良を遂げていくためには、SA・PAについても、求められる機能などを考慮し、適時適切な対策を実施していく必要がある。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)SA・PAについて、道路に携わる技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

 

■回答

1.PA・SAに関する課題

(1)物流支援に資する駐車場の機能強化

 物流は我が国の経済を支える重要なものである。

 しかし、トラックドライバーは、高齢化も進行している。さらに、物流業界の労働環境は悪く、若手の入職者も少ない状況である。

2024年問題では、働き方改革関連法に基づき、トラックドライバーの時間外労働の時間規制も強化されることで、物流の担い手不足が深刻となることが問題である。

物流の観点から、いかに物流支援に資するSA/PAの駐車場の機能強化を図るかが課題である。

(2)持続性向上に資する駐車場の機能強化

 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて様々な取り組みを進めているが、道路交通車両から多くのCO2を排出していることが問題である。

さらに、高齢化に伴う運転免許証の返納への対応や、人間の運転操作ミスに伴う事故削減のため、自動運転の普及が求められている。

 持続性の観点から、EV充電施設や、自動運転車両の拠点の機能と一体となった駐車場など、いかに持続性向上資する駐車場の機能強化を図るかが課題である。

(3)アクセス性能の強化

 諸外国のIC間隔は約5kmであるが、我が国は約10キロであることも影響し、都市間連絡速度も約62㎞/hと諸外国に比べ遅い。

 一方で、近年、SA・PAにスマートインターを整備し、アクセス機能を強化することで、地域の観光振興や産業振興を支援ニーズが高まっている。

 利便性の観点から、いかにSA/PAにスマートインターを整備するなどし、アクセス機能を強化するかが課題である。

2.最重要課題と解決策

(1)最重要課題

 「物流支援に資する駐車場の機能強化」が最重要課題である。

 なぜなら、速攻性のある効果が期待でき、長期的に効果が期待できるためである。

(2)解決策

➀中継輸送のできる駐車場機能強化

 トラックドライバーは、長距離輸送の場合、往復にかかる時間から日帰りできず、トラック内で寝ることを余儀なくされることもある。このため、トラックドライバーの労働環境は悪い。

 そのため、中継輸送が可能となる駐車場に機能を強化することで、物流業界の労働環境を改善できる。

 例えば、関西圏から首都圏の輸送の場合、往復に要する時間から日帰りが困難なため、中間地点の名古屋のSA・PAで中継輸送できるようにする。

 具体的には、中継拠点で、荷台を別のドライバーの荷台と交換し、輸送することで日帰りが可能となる。

②ダブル連結トラックの駐車が可能となる機能強化

 トラックドライバーが不足しているため、物流の生産性を向上させる必要がある。

 1台のトラックの荷台の後ろに、もう一つの荷台を連結させることで、一人のドライバーで2台分の輸送が可能となるダブル連結トラックが有効である。

 しかし、ダブル連結トラックは、最長25mの寸法と車両が長く、現状の駐車場では駐車が困難である。

 そこで、区画の再整理や駐車場の拡張により、ダブル連結トラックが駐車できる機能を強化する。

3.   新たなリスクとその対応

(1)新たなリスク

 解決策実行後は、様々な車両がSA・PAの駐車場を利用することとなる。しかし、駐車場の利用ルールの周知不足や、一般車両のドライバーのマナーが悪いと、物流車両が駐車できないリスクがある。

(2)リスクへの対応策

 駐車場の利用ルールをパンフレットにわかりやすくまとめ掲示する。SA/PAでもアナウンスする。

 さらに、運転免許の更新時の講習内容にも、関係機関と連携し追加する。

 中継輸送や、ダブル連結トラック駐車には、占用スペースが必要であるため、事前予測制を導入し、物流関係事業者と連携して、運用する。   以上

 

■技術士会の評価

A

 

■自己評価

良いと思います。

まず、この問題を選択したのがよかったです。

もう一つの交通安全の問題が非常に、一般的な問題で、なじみのある話題で、逆に評価基準として、何を求めているのは分かりにくい状況でした。ただ、このSA・PAは、なじみがない話題なので、たぶん多くの受験者は、交通安全の問題を選択したと思います。

根拠のない推測ですが、受験者があまり選択していない問題の方が、評価の基準のハードルは実際は下がると思います。

マイナーな部分も勉強していることが伝わるので、そこをアピールできたのはよかったです。

ほんとに勉強できている受験者は、最重要課題に、EV充電施設や、自動運転車両の拠点の機能と一体となった駐車場の関係を設定していると思いますが、私はこれはできませんでした。(出題者の本命はこっちだと思います)

次に、よかったのは、ところどころ、専門用語のような数値や単語が挿入できていることです。

一方で、反省点は、課題(3)が出題者が求めている話題ではないことです。情報提供の機能向上を課題(3)に挙げておけばよかったかと思います。