市街地部の主要幹線道路における平面交差点では、慢性的な渋滞の解消を目的として交差点立体化事業が進められている。この交差点立体化事業における高架橋(鋼橋)架設工事の計画を立案し実施する担当責任者として、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 

■回答

1.調査、検討事項とその内容

(1)現道の道路構造等

 現道の交差点の状況について、道路ネットワーク状況や、交差点の形状、交差する道路の双方の幅員構成(車線数、右左折レーン数、右左折レーン長等)、交差点の上空の状況、ベント設置スペース、送出し工法の可否等の道路構造を調査し、工事期間の渋滞悪化対策や安全な施工計画を検討する。

(2)道路利用者等

 当該交差点における平日、休日、時間帯別(夜間、昼間(通勤時間帯、非通勤時間帯))における交通量(普通、大型車、自動二輪車、自転車、歩行者等)、信号現示の状況を調査する。さらに、渋滞長、渋滞発生時間帯、平均旅行速度、周辺施設(営業時間帯等を含む)を調査し、対策工事による道路利用者や周辺環境への影響の最小化対策を検討する。

(3)高架橋(鋼橋)架設技術

 近年の類似工事の事例や、高架橋(鋼橋)架設工事の最新技術(規制必要日数や施工に必要なスペース、施工の安全性等)、錆発生要因環境を調査し、本交差点への最適工法の導入や、影響緩和策を検討する。

2.業務を進める手順

(1)事前調査

 上記1で示した内容を表、マップ、文書で整理する。

 UAVによる定点観測により、効率的に周辺環境、渋滞状況を効率的に把握するよう工夫する。また、利用者の実態が重要なため、物流関係等の道路利用者にヒアリングし、結果に反映するよう留意する。

(2)計画立案

 事前調査を踏まえ、抽出された課題を解決できる改善策を複数示す。対策案は、初期費用、維持管理費用、施工性、道路利用者への影響を数値し、総合的評価を行うよう留意する。夜間に短い規制に抑えることが可能となる技術工法を採用するよう受注者に技術提案を求め、影響緩和を促すよう工夫する。

(3)シミュレーション・意見公募

 立案計画は、実行前にシミュレーション(スマート・プランニング手法)を実施し、道路利用者の理解を得られる対策かを確認し、計画反映を工夫する。パブリックコメントを行い、計画反映を留意する。

3.関係者との調整方策

 業務を効率的、効果的に進めるため、交差する道路管理者、物流関係者、公安委員会、地域住民で構成する協議会を設置し、それぞれの意見を抽出し、対策計画にまとめる。高架橋工事により、渋滞解消に効果が期待できるが、対策工事を実施する際には、通行規制等を伴う。そこで、通行規制最小化が期待できる工法を積極的採用や周辺道路ネットワークの渋滞していないルートの案内、わかりやすい工事のお知らせの配布など、影響緩和策に取り組み、利害を調整する。

 

■自己評価

この問題のテーマは、交差点立体化事業における高架橋(鋼橋)架設工事の計画立案です。

本番では、この問題は選択しませんでした。

なぜなら、そんな現場経験はありませんし、そんな現場自体、私の住んでいる県にはほとんどないため、イメージが湧きませんでした。

この問題は、計画といっても、計画、調査、設計、施工、維持管理の、計画ではなく、工事の計画なので、どちらかというと施工計画のことです。

上記回答では、十分、施工計画となっていない部分もあるので、その点が反省点です。

問題の題意としては、次のとおりです。

「市街地部の主要幹線道路において平面交差点」という部分から、現道の交通量は多く、工事に伴う通行規制で社会的影響が大きいので、その検討をしなさいよ!交差点だから、交差する側の道路との調整もいるよ!

「高架橋(鋼橋)架設工事」という部分から、PCではなく、メタルの特性を踏まえた検討をしなさいよ!つまり架設方法がいくつかあるので、それを検討しなさいよ!他は錆やすいとかもでしょうか。

今月(R5.8月)には、静岡で工事中の桁落下事故も発生しているので、原因と再発防止策が明らかになれば、来年はこういったテーマも出題されやすいかと。

設問(1)では、かなりの数のキーワードが入っているかと思います。設問(2)も制約のある工期の中で、効率的になるよう工夫する点、それでも抜けてはいけない留意点が結構記載できたように思います。設問(3)は、やはり工事期間中の通行規制による影響の利害調整を挙げてみました。

全体として、工事中の通期規制による影響のことばかりになっています。これは、題意に沿っていると思うのですが、他にも読み取れていない題意があるんだと思います。

私は施工計画はなじみが薄いので、読み取れません。でも、専門的な知識がないわりには、まあまあの回答になっているんじゃないと思っています。

 

■鋼橋の架設工法の種類

・ベント工法:ベント工法 (トラッククレーンベント工法)は、もっとも一般的な架設工法。他の架設工法に比べて少ない仮設備で架設出来る。架設工期は他の工法に比べて短くて済む。

・送出し工法:送り出し工法(手延機による)は、流水部、道路、鉄道等、桁下にトラッククレーンが設置できなく、架設現場に隣接して主桁と手延機を組み立てる場所が確保できる場合に使用する工法。 

・片持ち式架設工法:桁の一端を橋台または橋脚に固定して(片持ち)、他端を径間の中央に向かって延伸しながら架設していく工法。

・ケーブル式工法:トラッククレーンが桁下に進入できず、ケーブルクレーン設備が設置可能なヤードが確保できる場合に採用される工法。

・一括架設工法:本外線で橋体を地組立し、大ブロック化した部材を大型クレーン等を用いて、本線外・橋台後方等から一括架設する架設工法。