我が国の人口は2010年頃をピークに減少に転じており、今後もその傾向の継続により働き手の減少が続くことが予想される中で、その減少を上回る生産性の向上等により、我が国の成長力を高めるとともに、新たな需要を掘り起こし、経済成長を続けていくことが求められている。

こうした状況下で、社会資本整備における一連のプロセスを担う建設分野においても生産性の向上が必要不可欠となっていることを踏まえて、以下の問いに答えよ。

 

(1)建設分野における生産性向上に関して、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)~(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

 

■回答

1.建設現場における生産性向上に関する課題

(1)i-constructionの推進

 建設工事の約4割を占める土工、コンクリート工の生産性が低く、約30年前と比べても向上していないことが問題である。これは、建設業は、現場の状況が一つひとつ異なってくるため、現場に合わせて現場打ちを中心とした個別最適化の一品受注生産となっていることが要因である。そこで、いかにIoTの導入等により生産性の向上に効果のあるi-construcitionを推進すべきかが課題である。

(2)国民意識の共有

建設業は、建設投資の急激な減少により、これまで労働力過剰の特徴があり、生産性向上の意識が低かった。しかし、近年は建設投資が下げ止まる状況であり。建設企業の業績も上がり始めている。そこで、今こそ国民からの要請である建設業の生産性向上について、いかに国民意識を業界で共有するかが課題である。

(3)施工時期の平準化

建設業は、技能者や施工機材を有効に活用できていないため生産性が低い。これは、公共工事は、第1四半期に工事量が少なく、この期間、作業員の手が空き、機材も有効に活用できないためである。

そのため、限られたリソースを年間通じて、有効に活用する必要がある。そこで、2か年国債の活用など、いかに施工時期の平準化を図るかが課題である。

2.最重要課題と解決策

(1)最重要課題

「i-   constructionの推進」が最重要課題である。

理由は、他の課題よりも生産性の向上に直結しているためである。また、この課題を遂行することで、他の課題も推進しやすくなるためである。

(2)解決策

➀ICTの全面的な活用(ICT土工)

 従来の手法では、測量は現場で野帳に手書き、設計は設計図から施工土量を算出し、個々に積み上げる必要があるなど多くの手間が発生。さらに、施工・検査でも、設計図に合わせた丁張の設置や、検測や施工の繰り返しが必要で、手間が多い。

 そこで、測量、設計、施工、検査等の建設生産プロセスに全面的に3元データを前提とするICT土工を導入し、省人化や手戻りの発生を抑制する。

➁全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化)

 従来手法では、部分別最適設計が採用され、コンクリート工では、鉄筋組立、型枠設置、生コン打設、脱型といった個々のプロセスで最適性を求め、建設生産プロセス全体での生産性の向上につながっていなかった。そこで、全体最適の考え方を導入し、サプライチェーンの効率化を図り、部材の規格標準化を図ることで、鉄筋をプレハブ化し、型枠をプレキャストかすることで作業をなくし、生産性を向上させる。

3.新たに生じうるリスクとそれへの対応

 解決策に共通して、新たに生じうるリスクは、管理基準が統一されていない状況で、誤った運用をすると、期待した生産性向上の効果が得られないだけでなく、構造物の品質低下や、現場の安全性の低下のリスクも懸念される。対応策として、3次元データを一貫して使用できるよう新基準を整備し、UAVにいる得た3次元点群データを作成するための標準的手法もマニュアルを整備する。さらに、これらの管理基準等やコンクリート工の規格最適化における留意点等を熟知した技術者をナレッジマネジメントにより育成する。

4.    業務遂行上の要件

(1)技術者倫理の観点

 本業務では、公衆の安全、健康、福利を最優先に考慮し、業務を遂行する。従来手法とはことなる手法での業務遂行では不明点等が発生することが想定される。

不明確なまま業務遂行すると公衆へ危害を及ぼすことになる場合がある。そこで、不明点は技術的な知見のもと明らかにした上で業務遂行する。

(2)社会の持続性の観点

 本業務の、分析、評価、計画、設計、施工、維持管理等の全業務遂行段階において、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、持続可能性を勘案して業務を進める必要がある。

 

■自己評価

この問題は、生産性の向上がテーマです。

施工時期の平準化もi-consutructionの中の取組ということで、課題(1)と(3)は重複と評価されるかもしれません。

なので、i-constructionのトップランナー施策で、課題を3つ挙げ、ICTの全面的な活用(ICT土工)の中で、3つ解決策を示す方がバランスがよかったかもしれません。

解決策に共通して生じうるリスクも、解決策➀の内容に偏っているようにとらえられる可能性もあります。

このあたりが改善点ですね。