我が国の社会や経済を支える高速道路は長期的に健全な状態で機能させることが重要であり、そのためには大規模更新・大規模修繕の実施が必要となる場合があるが、それらの実施にあたっては様々な留意事項がある。都市間を結ぶ高速道路におけるある橋梁で、鉄筋コンクリート床版の取り換え工事の計画を立案し実施する担当責任者として、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 

■回答

1.調査・検討すべき事項とその内容

(1)道路構造等について

 対象橋梁の幅員構成、大型車交通量、必要な耐久性、防水性能、プレキャスト製品の活用の導入可能性、現行の設計基準での床版とすることによる桁や橋脚への影響等を調査する。調査結果から、床版、桁、橋脚等橋梁全体の構造の妥当性を検討する。

(2)交通規制等について

全面通行止めの場合の広域迂回ルート候補、料金情報、迂回時間と、対面通行規制の場合の仮設や移動式防護柵等による柔軟な車線変更実現可能性等を調査する。

調査結果から、工程への影響や社会的影響の程度について、検討する。

2.業務手順(留意点・工夫点)

①事前調査→②対策立案及び実施→③効果確認を業務手順とする。

(1)事前調査

工事では騒音等も予見されるため、近隣の土地利用状況等についても予め把握し、特に騒音を避けるべき時間帯等も調査しておくよう留意する。

現行基準で設計された床版は従来よりも厚く重量が増すことがあり、その結果、桁や橋脚に影響を与える恐れがあるが、その場合は軽量かつ耐久性の高いUFC床版の採用など最新技術を導入するよう工夫する。

(2)対策の立案及び実施

一定の交通規制や渋滞について、社会的影響が大きいため影響が最小限となるよう、技術開発面と広報面等幅広にできることは最大限に取り組むよう留意する。 

また、全面通行止めによる広域迂回により施工環境を確保し工程短縮を図る場合、リアルタイム情報の発信や迂回クーポン等の料金調整を図るよう工夫する。

(3)効果の確認

工事中であっても交通規制や渋滞等の影響が社会的に許容できない事態となった場合は、施工方法や規制方法の再検討を行うよう留意する。

対策実施後は、対策の評価を行い、改善点等は次回工事計画等へ反映する。

3.関係者との調整方策について

業務を効率的、効果的に進めるために、学識者、警察、施工業者、道路利用者(物流業界等)等の関係者で構成する対策協議会を設置することが有効である。

具体的には、工事に伴う通行規制回避と施工環境確保は、相反する要求となり、これらの利害調整を図る。

理由は以下のことが可能となるためである。

学識者:幅広い視点から関係者の意見をとりまとめる。

警察:規制や交通事故の観点からの助言を得る。

施工業者:施工工程等への影響等の調整。

道路利用者:広域迂回の理解と代替の料金水準等の観点から許容可能な規制方法・料金調整等。  以上

 

■自己評価

この問題の題意は問題文の「様々な留意事項」が想定できるかでしょう。

「都市間を結ぶ高速道路におけるある橋梁」とあるので、通行規制関係のことは付与条件でしょう。

「高速道路は長期的に健全な状態で機能させることが重要」とあるので、将来にわたり健全な状態で維持できるよう工事を工夫して作ってね!(例えば、高性能床版防水の採用など)ということも付与条件でしょう。

上記回答では、全面通行止めによる広域迂回に触れていますが、業界の方向性としてはどちらかというと、片側毎に施工する対面通行のようです。そもそも4車線あるのかどうか不明のため、広域迂回の回答にしましたが、対面通行の方が評価は高いでしょう。

 

■キーワード

 車線確保、渋滞回避、交通量、ダブルネットワーク、路肩、通行帯、工事期間短縮、床版、塩害、ひびわれ、耐震性、通常の補修では機能が十分に回復しない、準備工、対面通行規制、床版切断撤去、床版架設、交通解放、音がでる作業は昼間に。